ホテルの客室にスマートフォンを設置し、宿泊客に無料でレンタルするサービス「handy(ハンディー)」が東北で拡大している。インターネットや電話が使い放題で、外出時に持ち出しできる。訪日外国人旅行者(インバウンド)の誘客に欠かせない公衆無線LAN「Wi-Fi(ワイファイ)」の整備不足も補えるとあって、急速に普及しそうだ。
仙台ターミナルビル(仙台市)は1日、運営するホテルメトロポリタン仙台など3ホテルの計693室にハンディーを導入した。
15日現在、宿泊客の2割が利用し、英語圏からの客が3分の1を占めた。電話や観光情報の検索に使われている。同社は今後、併設する駅ビル「エスパル」の情報発信などにも活用していく計画だという。
同社ホテル事業本部の米山俊秀事業企画室長は「細やかな情報発信によって旅行者の滞在時間を有意義にできる。インバウンドの取り込みにつなげたい」と語る。
仙台市内でホテルグリーンチェーンを展開する松月産業(同)も全13施設での提供を決めた。現在、東北で導入予定のホテルや旅館は約60施設に上る。
ハンディーは、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が出資する香港のベンチャー企業「Tink Labs(ティンク・ラボ)」が2012年に現地でサービスを始め、現在は世界約70の国や地域に広がっている。
ティンク社が専用のスマホをホテルにリースし、通話・通信料を負担。ホテル側は定額のリース料だけで導入が可能で、宿泊客は料金や通信環境を気にせずに国際電話や会員制交流サイト(SNS)などを利用できるメリットがある。
スマホは英語や中国語など31言語に対応。ホテルも独自に施設情報などを発信できるほか、災害発生時には緊急連絡手段となる。
ティンク社とシャープの合弁会社ハンディー・ジャパン(東京)は、今年7月に日本国内でのサービスを開始した。各地のホテルから申し込みが相次ぎ、10月末現在で15万台を超え世界最多となった。
日本は他国に比べワイファイの整備が遅れ、自国のスマホを利用するインバウンドは通信量や料金に不安があった。ハンディーによって、インバウンドを悩ませてきた通信環境の課題が解決される。
ハンディー・ジャパンの担当者は「旅行にスマホは不可欠な時代。年内には東北で100施設以上が導入するだろう」と話した。