東北の地方銀行と第二地銀15行の2024年3月期決算が出そろった。過去最高益を更新した七十七銀行を含む7行が単体ベースで増益の一方、8行が減益・赤字となった。純損益の15行合算はきらやか銀行(山形市)の大幅赤字が全体を押し下げ、前期比31・9%減の326億円。取引先の貸し倒れに備える与信関係費用が増え、国債の価格下落に伴う売却損も拡大した。
与信費増、国債売却損拡大
各行の主な決算内容は表の通り。15行のうち、唯一赤字となったきらやか銀は、過去最大244億円の純損失を計上した。川越浩司頭取は「しっかり黒字にできる体質をつくる。稼ぐ力は着実に付いている」と強調した。
きらやか銀の不振の主因は、当初計画10年分の貸倒引当金を前倒し一括計上した与信関係費用の急増だ。15行のうち、きらやか銀を含む9行が前年同期から膨らみ、全体で59・7%増の350億円に達した。企業倒産が増加基調の中、予防的に引当金を積み増す傾向がうかがえる。
東北銀行(盛岡市)の佐藤健志頭取は、新型コロナウイルス対策の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)に触れ「返済が始まって厳しいという事業者は確かにいる」と指摘。北日本銀行(同)の石塚恭路頭取は「地域経済は厳しい状況が続いている」との見方を示した。
26年度に荘内銀行(山形県鶴岡市)との合併を控える北都銀行(秋田市)の伊藤新・頭取は「(コロナ禍後の)取引先の事業再生支援に加え、合併を見据えてあらかじめできる限りの引当金を積み増した」と説明した。
一方、15行の中で唯一、引当金の戻し入れ益を計上した大東銀行(福島県郡山市)の鈴木孝雄社長は「当行は10年ぐらい大口倒産がなく、与信費用が業績を圧迫することはない」と述べた。
前期は米国の急速な利上げで外国債券の売却損が目立ったが、24年3月期は国内の長期金利上昇で価格が下落した国債の売却などにより、国債等債券損益の赤字幅が521億円に拡大した。
山形銀行は国債等債券損112億円を計上し、減益の一因になった。佐藤英司頭取は「市場の状況と当行の収益状況を加味し、バランスを見ながら有価証券の評価損を圧縮していく」との考え。荘内銀の松田正彦頭取は「有価証券の評価損が拡大している。金利リスク抑制の観点からもポートフォリオ(運用資産構成)の再構築に取り組む」と話した。
3期連続で最高益を更新した七十七銀の小林英文頭取は「コンサルティング営業の専門性が上がってきたことに加え、長期金利の上昇が貸出金利に跳ね返るなどし、売上高が伸びた」と分析した。