東北の基準地価 「三極化」顕著に

【解説】国土交通省が19日発表した東北の基準地価は、全国的な大都市部の持ち直し傾向が県庁所在地を中心に現れ始めたことが鮮明になった。大幅な上昇が続く仙台圏、需要の高まりが見込める都市部、下落が止まらない郡部。東北の地価は「三極化」が顕著になりつつある。
 仙台市以外の都市部を見ると、山形市で住宅地の変動率が3.0%上昇(前年比0.4ポイント増)となった。市は2017年6月、市街化調整区域内の宅地開発の規制を緩和。市中心部で土地を購入できなかった子育て世代が、郊外で一戸建てを求める動きが出ているためだ。
 北上市は半導体製造大手東芝メモリ(東京)の新工場が来年稼働し、数千人規模の雇用が見込まれる。JR北上駅周辺で関連企業のオフィス需要が高まり、商業地が前年のマイナス0.7%から1.1%に上昇。プラスに転じたのは実に27年ぶり。従業員向け賃貸住宅の需要もあり、横ばいだった住宅地は前年から1.8%上昇した。
 東日本大震災の津波被害に遭った沿岸部は下落が続く。宮城では石巻市、気仙沼市、山元町の住宅地で下げ幅が広がった。岩手では三陸沿岸道や3月に開業した第三セクター三陸鉄道(宮古市)リアス線の沿線の一部に住宅地の上昇があったものの、国交省は「人口減が地域経済を低迷させ、下落が止まらない」と分析する。
 東北の下落地点は前年比で住宅地が25、商業地は19減った。旺盛な需要が続く仙台市がリードするが、市の将来人口推計では20年度ごろをピークに減少に転じる。
 東北に住む若い世代をつなぎ留め、首都圏を軸に人々をどう呼び込むか。居住環境の充実や働く場の創出に向けた官民の取り組みがさらに求められる。(東京支社・橋本智子)

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