東北の観光復活へ高まる期待 移動自粛解除後初の週末

新型コロナウイルスによって閉ざされていた県境の扉が放たれた。自粛要請の全面解除から初めての週末となった20日、東北各地では観光客が久しぶりの開放感に浸った。例年の客足は戻らないままだが、業界は今後の東北の観光復活に期待した。
 岩手県有数の観光地、小岩井農場まきば園(雫石町)は、多くの親子連れでにぎわった。来場者は例年より4、5割少ないが、営業再開した1日以降では最も多かったという。
 仙台市青葉区の会社員高橋瑞樹さん(36)は、花巻市に住む息子3人と来園。新型コロナで往来を自粛していたが、3カ月ぶりに再会し「特に子どもの成長を感じた」と喜んだ。
 青森市の八甲田連峰では、散策客らがロープウエーで田茂萢山頂(1324メートル)を目指した。ゴンドラの定員を100人から30人に制限して運行している。
 新潟県南魚沼市の自営業上村みさおさん(64)は「旅行は正月以来。青森を満喫し、明日は秋田を回って帰る」と笑顔を見せた。
 国内有数の規模を誇る村山市の東沢バラ公園は1日に再開した。来園者に連絡先の記入をお願いするなどの対策を取る。
 埼玉県川口市の主婦原田信子さん(70)は「首都圏から来るのは悪いかなという思いもあったが、自粛解除で大丈夫と考えた」と、見頃のバラを楽しんだ。
 「遠出を控える代わりに、仙台市内の思い出の場所を回っている」。青葉区の公務員佐々木大輔さん(24)、みちるさん(24)夫妻は20日に婚姻届を出したばかり。同区の仙台城跡で記念写真を撮影した。
 観光関係者は感染予防を徹底し、今後の観光集客の回復を期す。
 宮城、山形両県にまたがる蔵王連峰の火口湖「お釜」を見渡せる刈田岳山頂近くの駐車場には、首都圏ナンバーの車もあった。ただ、蔵王山頂レストランの利用者は、例年の3割程度にとどまる。
 運営する宮城蔵王観光(宮城県蔵王町)の若生孝弘さん(42)は「観光客がどれほど回復するか見通せない。『3密』対策を取って耐えしのぎたい」と言う。
 福島市の土湯温泉は今月から、独自の感染防止策を講じている。土湯温泉観光協会の加藤貴之会長は「事業者はうれしい一方で感染に対する不安もある。『withコロナ』の道を探りながら温泉街を活性化させたい」と力を込める。
 例年、新緑の武家屋敷を見ようと大勢の観光客が訪れる仙北市角館。ホテルの予約は例年並みには程遠く、田沢湖・角館観光協会の青山慎一事務局長(48)は「徐々に人の往来が増えることを期待している」と願った。

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