東北の食材を都心へ 若手生産者が「営業」

東北の若手生産者らが、自ら手掛けた食材の魅力を消費者に直接伝えて固定ファンを増やそうと、東京でワークショップや料理教室を開いている。農林水産省が推進する6次産業化や高付加価値化につながる試み。東日本大震災後、回復途上にある販路拡大の契機にもしようと懸命だ。

大田区の「石巻マルシェ」で14日に開かれたワークショップは、実家が被災した石巻市牧浜のカキ養殖業阿部貴俊さん(45)が企画。70人が参加し、養殖作業の様子や生産地の自然環境などの説明を受けた後、カキ料理を堪能した。
川崎市の会社員佐藤智行さん(44)は「生産者から子どもたちが学ぶことができる良い機会」と親子で参加。初めてカキの殻むきも体験した。
「地道だが牧浜産カキの固定ファンを増やす確実な方法。直接取引を増やし市場価格に左右されない体力を付けたい」と阿部さん。都内でのワークショップを年内に4回計画している。
喜多方市のコメ農家出身の山田みきさん(39)=東京都世田谷区=は、東京のNPO法人が企画する料理教室の運営に関わり、手応えを感じている。
小菊カボチャや御種ニンジンといった会津の伝統野菜を食材にした料理教室を昨年11月に銀座で開いたところ、首都圏の飲食店経営者や主婦ら約20人が集 まった。栽培の苦労や魅力をビデオで伝えた生産者に会いに、後日、会津まで行った参加者もいたという。次回は遠野地方の伝統野菜をテーマに教室を考案中 だ。
生産者が積極的に消費者との接点を探る傾向について、スローフード運動を提唱したノンフィクション作家の島村菜津さん(51)は「小規模生 産者が1次産業の大規模化や大量生産の流れに対抗するには、そこにしかない食べ物の魅力を伝えることが重要だ」と指摘。「震災後、被災地と都会の消費者が つながる機会は増えており、いまが風土や歴史、人の手間に根差した食べ物の魅力を伝える好機。生産者は努力を惜しんではいけない」と話す。

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