東北の12月景況感、20年ぶり全産業プラス 復興特需拡大

日銀仙台支店が15日発表した東北の12月の企業短期経済観測調査(短観)によると、景況感を示す業況判断指数(DI)は全産業がプラス3となり、1992年2月以来およそ20年ぶりに全産業がプラスに転じた。前回9月調査比では7ポイントの上昇で、2期連続の改善。東日本大震災の復興関連の特需が幅広い産業に広がり、海外経済の減速や円高による収益悪化など悪影響をカバーした。
 業種別では製造業が5ポイント改善の1となり、2期連続で改善した。プラスは2007年12月以来4年ぶり。ほとんどの業種で改善し、特に震災関連需要の大きい窯業・土石は前期比44ポイント改善の22に、震災後の生産回復が続く自動車など輸送用機械も、前期の0から23に改善した。
 ただ電気機械は5ポイント悪化のマイナス17、生産用機械は11ポイント悪化のマイナス11。海外経済の減速による輸出不振やタイ洪水の影響を受けた。
 非製造業は9ポイント上昇の5で、2期連続で改善し92年5月以来のプラスとなった。建設が4ポイント改善の11となるなど、復旧工事関連の好調さが際立った。小売りは10で4ポイント悪化したものの、プラスを維持した。
 規模別で中堅・中小企業は製造業が5ポイント改善の4、非製造業が8ポイント改善の5でともに上向いた。大企業は非製造業が15で11ポイント改善したのに対し、製造業は海外経済の影響などでマイナス30と4ポイント悪化した。
 東北のDIの推移はグラフ、県別DIは表の通り。震災の被害が大きい岩手、宮城、福島3県の改善ぶりが目立った。電気機械産業の多い山形だけ悪化した。
 3カ月後の先行きは製造業が11ポイント悪化のマイナス10、非製造業が9ポイント悪化のマイナス4で、全産業が10ポイント悪化のマイナス7を見込む。
 福田一雄支店長は「予想以上にいい数字となった。景況感の改善に伴い人手不足も一部で生じ、雇用につながる兆しも見え始めた」とした。
 調査は11月14日~12月14日、東北の732社を対象に実施。回答率は99.3%。
◎成長維持へ基盤強化を
 【解説】日銀仙台支店が発表した東北の12月の企業短期経済観測調査(短観)は、東日本大震災関連の特需の大きさをあらためて鮮明にした。だが、海外経済の不透明感や円高など取り巻く環境は厳しく、特需に沸く今こそ、将来を見据えた取り組みが求められると言える。
 復旧、復興関連事業はこれから本格化し、東北経済は「全体としては引き続き回復過程をたどる可能性が高い」(福田一雄日銀仙台支店長)。
 ただ製造業、非製造業とも3カ月後の先行きで悪化を見込むなど、予断を許さない状況にあるのも事実だ。
 特需の恩恵度合いに地域格差が出ているという課題もある。特に震災の傷跡が深い太平洋沿岸の被災地は、水産関係をはじめ多くの産業が震災前の状態とはほど遠い。
 県別でみても業況判断指数(DI)は、日本海側の秋田、山形両県がマイナスで、太平洋側との違いが際立つ。
 特需はいずれ終わる。「その前に新たな商品や、技術の開発など構造的改善に取り組む必要がある」。日本政策投資銀行東北支店の和田敬記企画調査課長は指摘する。
 特需終了後も成長を確保できる経済の基盤づくり。それこそが東北経済の真の再生に欠かせない。

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