東北主要企業、来春の採用増は22・8%にとどまる 若年人口減少で採用難続く

東北に本社を置く主要企業の2025年春の新卒者らの採用計画で、全体の22・8%が24年春より採用数が増えると見込んでいることが、河北新報社のアンケートで分かった。事業拡大のため積極採用を目指す動きがある一方で、若年人口の減少などを背景とした採用難が続き、23年の前回調査を13・6ポイント下回った。

 調査結果の過去5年間の推移はグラフの通り。採用数が「増える」と答えた割合は、コロナ禍の影響があった21年春に次いで低い水準となった。「前年並み」は前年比7・6ポイント増の32・6%、「減る」は8・3ポイント増の22・8%だった。

 業種別では、「専門店・小売り」の12社のうち4社が「増える」と回答。ドラッグストアの薬王堂(盛岡市)は新規出店拡大のため、24年実績を大幅に上回る120人の採用を計画する。別の専門店・小売業界の企業は「増える」と答えた理由を「前年の採用実績が計画を下回ったため」と説明した。

 25年春の採用環境を「前年より売り手市場」とみる企業は69・2%に上った。前年を2・3ポイント下回ったものの、企業からは「応募者が前年より減っている」(銀行)、「内定の辞退が多い」(食品・外食)などの声が上がった。24年実績を上回る規模の新規採用を計画しながらも、採用者数の見通しを「減る」「分からない」とした企業もあった。

 薬王堂以外に100人以上の採用を計画するのは、アイリスオーヤマ、ゼビオ、第一貨物(山形市)、東北電力(東北電力ネットワークと合同採用)、ユアテック、人材派遣業の東洋ワークグループ(仙台市、グループ全体の採用規模)。このほか、24年春に100人以上を採用した企業のうち、3社が「増える」「前年並み」と回答した。

 アンケートは東北に本社や本店を置く上場企業など106社に実施。93社(87・7%)から回答を得た。

「人手不足感じる」は67・4% 前回下回るもなお高水準

 河北新報社が実施した東北の主要企業アンケートによると、人手不足を「感じている」と答えた企業は67・4%に上った。2023年の前回調査を7・6ポイント下回ったが、なお高い水準が続く。24年春の採用実績が計画未満だった企業も56・0%と過半数を占め、人材確保に苦労している実態が浮かび上がった。

 人手不足に関する回答状況はグラフの通り。「感じていない」は19・6%で、前年の19・8%と同水準となった。

 人手不足を感じている企業のうち、経営に「影響がある」と答えたのは37・1%(前年比3・1ポイント減)。「今後の影響を懸念している」も54・8%(2・1ポイント増)を占め、「影響なし」は8・1%だった。

 「影響がある」とした企業からは「減便による収入減」(運輸)、「受注に生産が追い付かない」(製造業)などの声が上がった。

 「懸念している」と回答した企業からは「時間外労働の規制強化も始まり、マンパワー不足が懸念される」(建設・住宅)、「業務の属人化が進み、有給休暇の消化にも影響する」(運輸)との意見が出た。

 不足している人材(複数回答)は「即戦力となる中堅層、専門家」が最多の75・8%。「一定の経験のある若手」(54・8%)、「新規学卒者」(46・7%)と続いた。

 人手を充足できない理由(複数回答)は「募集しても応募がない」が69・3%、「内定を辞退された」が51・6%、「採用したが定着しなかった」が38・7%となった。

 24年春の採用実績と計画との比較を尋ねると「計画未満」は56・0%、「計画通り」は39・6%、「計画以上」が4・4%だった。

 人材を十分に確保できない状況を踏まえ、68・5%の企業が中途採用を「計画している」と答えた。副業・兼業人材の活用についても計21・5%がデジタル関連業務などで「活用している」「活用の予定がある」と回答した。

「大手企業は早い段階で内定を出す」 東北の採用環境は厳しく

 東北の主要企業アンケートで、2025年春の採用環境を「前年より売り手市場」とみる企業が69・2%に上った。採用の動向などを自由記述で尋ねたところ、首都圏の大手企業などの早期選考を背景に、採用環境が悪化している状況を懸念する声が相次いだ。

 政府は25年春卒業予定の大学生らを対象とした採用試験の解禁日を6月1日と定めるが、実際は先行して採用活動を進める企業が多い。5月1日時点で大学生の7割超が内定を得たという民間調査もある。

 アンケートでは建設・住宅業界の企業から「大手企業は早い段階で内定を出すので厳しい状況。大手は高校生も積極採用しており、地元の高校から応募がなくならないか心配している」と懸念が寄せられた。「大企業や知名度の高い企業に人気が集中し、会社説明会の参加者を集めることが難しい」(製造業)という声もあった。

 政府に対して「ルール通りに6月から採用活動をしているが、早期に選考した他社に優秀な人材が流れている。実情に沿ってルールを見直してほしい」(食品・外食)と求める意見もあった。

 東北の企業はインターンシップ(就業体験)に力を入れるなど対策を講じている。食品・外食業界の別の企業は「対面のインターンや説明会が応募につながっている。本年度も注力したい」と回答した。

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