東日本大震災の津波で被災した宮城県亘理町の津波浸水域で営農する農事組合法人「マイファーム亘理協同組合」が、本年度の日本水大賞のグランプリを獲得した。東北からの受賞は初めて。農業水利の崩壊と塩害の厳しい条件下、工夫を重ねて栽培に成功したことが評価された。
被災した同町吉田浜地区のイチゴ、コメ農家ら5人を中心に昨年3月に設立した。塩水をかぶり、農業用水路も壊されて荒れた農地約6ヘクタールで、トマトを露地栽培した。
栽培では工夫を重ねた。農地に炭酸カルシウムをまき、微生物の働きで土壌の塩分濃度を軽減。塩分が比較的少ない地下水をくみ上げて作物に与えた。
昨夏は125トンの収穫に成功。加工したジュース(税込み525円)やケチャップ(同500円)をことし3月から町内や九州などで販売し、計2万本を売り上げた。発売前に放射性物質を検査し、両品とも1キロ当たり約5ベクレルと国の基準値(100ベクレル以下)を大きく下回った。
千葉義昭代表(62)は被災しなかったが、田畑を失った農家を支援するために組織を設立した。「がれきに埋もれた農地で本当にトマトが育つのか不安だった。自分たちの活動が評価されて素直にうれしい」と話す。
参加する被災農家も受賞を喜ぶ。農場長を務める斎藤正一さん(67)は水田とイチゴ畑計4ヘクタールと自宅が津波で浸水した。「長年耕した農地を自分で守りたい一心だった。今後の活動の励みになる」と語った。
日本水大賞は、水に関わる活動に熱心に取り組む団体や個人を同大賞委員会(名誉総裁・秋篠宮殿下、毛利衛委員長)が選定する。15回目の本年度は全国から185件の応募があった。表彰式は7月2日に東京で開かれる。
トマト加工商品の連絡先は共生地域創造財団022(748)6336。