省エネルギー住宅先進地のドイツで普及が進む「パッシブハウス」への関心が東北で高まっている。工藤建設(奥州市)が建てた超省エネ住宅「遖(あっぱれ) な家」が、東北で初めてパッシブハウスの認定を受けた。断熱性能を極限まで高め、真冬でもストーブ1台で家全体が暖まるよう設計されている。
奥州市にあるモデルハウスの壁や屋根、天井の厚みは通常の住宅の約3倍。断熱材には新聞紙が原料のセルロースファイバーを使う。熱が最も逃げやすい窓ガラ スは三重サッシを採用。地中熱空調システムを取り入れ、地中2メートルに埋設したパイプから夏は冷たく、冬は暖かい空気が24時間室内に流れる。
工藤一博社長は「奥州市では8畳の部屋を暖めるのに年間約1000リットルの灯油が必要。この家では2缶(36リットル)で十分」と話す。2階建て床面積約200平方メートルの暖房装置は、まきストーブ1台だけだ。
幼少期の体験が工藤社長を超省エネ住宅建設に駆り立てた。「夏に合わせた昔ながらの家で、冬の朝は凍るような寒さ。猫を布団に引き入れなければ暖まらなかった」。ドイツでパッシブハウスの実例を見て建設を決意した。
2013年に完成した住宅の建設費は約6000万円だった。輸入品しかなかった三重サッシの生産に国内メーカーが着手するなど、現在はコスト削減が可能で「通常の住宅の約1.5倍の費用で建てられる」(工藤社長)という。
完成以来、家の見学者は500人を超えた。工藤社長は「家全体が暖かいから、ヒートショックのような健康障害も防げる。夏冬を通して快適に過ごせる住宅の良さを多くの人に知ってもらいたい」と話した。
<パッ シブハウス>建物の気密性と断熱性を上げることで、最低限の空調設備で快適に過ごせることを目指す住宅。アクティブ(能動的)な冷暖房器具が不要であると いう意味合いから、パッシブ(受動的)と名付けられた。認定にはドイツパッシブハウス研究所が定めた性能基準を満たす必要がある。