東北労災病院移転「審議会の理解が絶対条件」病院が見解 県主張の前提揺らぐ

 宮城県が主導する仙台医療圏4病院の再編構想のうち、県立精神医療センター(宮城県名取市)と東北労災病院(仙台市青葉区)の宮城県富谷市への移転合築を巡り、東北労災病院は14日、「県精神保健福祉審議会の理解が(構想を進める)絶対条件」との見解を明らかにした。

富谷への移転合築巡り見解

 精神科医や当事者でつくる審議会は大半の委員がセンター移転に反対する。村井嘉浩知事は審議会の賛否にかかわらず構想を進める意向を示すが、知事の主張の前提が揺らいだ形だ。

 市民団体「ともに市政をつくる仙台市民の会」が14日、東北労災病院を訪れ、慎重な協議を求める要望書を提出。非公開の会談の席上、同病院の山下和則事務局長が「審議会の理解が絶対条件」との見解を示したと、会談後に報道各社の取材に応じた市民団体の代表が明かした。

 山下事務局長は河北新報社の取材に対し、発言に間違いがないことを認めた上で「このことは県に何度も伝えている」と強調。東北労災病院を運営する労働者健康安全機構(神奈川県)も同じ認識だと説明した。

 県が4病院再編構想を発表した後、審議会は5回開かれており、センター移転に対しては反対意見が一貫して多数を占めている。

 8月31日の審議会には村井知事も出席し、移転するセンターの代わりに民間の精神科病院を名取市に誘致する計画を公表。「どのような意見が出ても、私の意見に変わりはない」と発言し、委員の反発を招いた。審議会は今月13日の会合で「民間病院の公募は時期尚早」との意見を賛成多数で可決した。

 村井知事は開会中の県議会9月定例会などで「意思決定するのは知事であり、審議会ではない」と述べた。審議会が反対しても構想は進められるとの見立てだったが、合築協議の当事者から審議会重視の意見が出たことで、軌道修正を迫られる可能性がある。

知事「運営主体の考えは別」

 村井嘉浩宮城県知事は14日、報道各社の取材に応じ、県精神保健福祉審議会の理解を得ることが移転合築の条件という東北労災病院が示した見解について「寝耳に水だ。(病院を運営する)労働者健康安全機構の理事長に電話をしたが『機構はそのような考えは全くない』と回答があった」と説明した。

 村井知事は、東北労災病院の移転合築に関する協議の相手は、あくまでも機構だとの考えを強調。「審議会の理解を得ることが条件というのは、事務局長の思いを発言したのだろう。理事長と事務局長の間に認識の違いがある」と述べた。

 「理事長と事務局長では(立場に)相当な開きがある。県はあくまで機構の本部と調整している。本部の考えが意思決定権を持っている」と指摘。「審議会の同意の有無に関係なく、これまでと変わらず、粛々と協議を続けていく」と語った。

タイトルとURLをコピーしました