東北学院大被災文化財レスキュー作業大詰め

東日本大震災で被災した石巻市鮎川地区の民俗資料を救う東北学院大の文化財レスキューが大詰めを迎えている。震災のあった2011年以降、先輩から後輩へ と引き継いできた活動は最終の復元工程に差し掛かった。よみがえった民具はことし3月、市に返却する予定。学生たちは「一つでも多く地元に戻したい」と意 気込んでいる。

地域の民具を収めていた石巻市鮎川地区の「鮎川収蔵庫」は津波で浸水した。流失は免れたものの、1000点程度あったとみられる資料の多くが破損。形が残っていたのは600点ほどだった。支援に訪れた専門家が、ばらばらになった木片など約4000点を回収した。
大半が明治期から昭和30年代にかけての民具で、鮎川の伝統産業である捕鯨に関する漁具も多い。東北学院大の加藤幸治准教授(民俗学)は「いまとなっては、津波で壊滅した集落の暮らしを伝える貴重な資料」と強調する。
加藤准教授の指導で学生たちは、カビや汚れを落とし、何度も水を換えて塩分を抜くなど修復に取り組んできた。
昨年12月には学生約20人が、破片となった木材の大きさや形、樹種、墨書きの文字などを手掛かりに、復元を試みた。4年の桜井かほりさん(22)は「民具は被災地にあった日常を思い起こさせる。何とか元の形にして返したい」と汗を流した。
学生たちは何度も鮎川地区を訪れ、お年寄りから民具の用途や習俗について聞いたり、祭りに参加したりと交流も深めてきた。青森市出身の3年森山茜さん(20)は「自分は経験しなかった震災を具体的に学ぶことができた。鮎川の復興に少しでも役立てばうれしい」と話す。

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