東北運輸局などが7日まとめた10月の東北の新車新規登録台数(速報値)によると、乗用車は前年同月比13.3%増の1万7793台で、2カ月連続で増加した。軽自動車も15.4%増の1万5208台となり、2カ月連続で2桁の伸びを記録した。
昨年9月に終了したエコカー補助金効果の反動減が一巡したのが主な要因。今夏以降の各メーカーの新車投入効果もあり、販売市場の復調が鮮明になっている。
県別の状況は図の通り。乗用車、軽自動車とも全県で前年を上回った。乗用車は青森を除く5県、軽自動車は宮城を除く5県で増加率が10%を超えた。
東北全体では、乗用車のうち普通(3ナンバー)が22.6%増の7081台、小型(5ナンバー)が7.9%増の1万712台。トラックなどの貨物は10.1%増の2939台だった。
<駆け込み需要に照準>
東北の自動車販売に明るい兆しが見えてきた。東北運輸局によると、6県の新車新規登録台数はエコカー補助金の反動減で8月まで12カ月連続の前年割れとなったが、9月、10月は前年同期を上回った。来春の消費税増税を控え、ディーラー各社は駆け込み需要を含めた市場の一層の盛り上がりに期待を寄せる。
トヨタ自動車東日本が本社を構え、関連産業の集積が進む宮城県。トヨタカローラ宮城(仙台市)は、トヨタ東日本が8月から製造しているカローラのハイブリッド車(HV)を「伊達ブリッド」と名付け、販売の主軸に据える。
アクアなど競合HVが多い中、納車まで約3カ月かかる人気ぶり。寺島晃新車部営業企画室長は「車も『地産地消』で県民の心に訴えたい」と成約の上積みを目指す。
車市場の活況は、トヨタなどメーカー各社が相次いで新型発表に踏み切ったことも背景にある。
9月に世界最高水準の燃費性能を持つフィットHVを売り出したホンダは、年度末までに計6車種を市場投入する。ホンダカーズ宮城中央(仙台市)の幹部は「ガソリン車の燃費も向上しており、多彩な魅力をPRしたい」と力を込める。
マツダは21日、主力の新型アクセラを発売する。東北マツダ(仙台市)の滝口秀昭取締役は「予約は順調。初登場となるHVや躍動感あるデザインで多様なニーズに対応できる」と語る。
新型車に加え、手頃感を売りに人気を集めるのが軽自動車だ。9、10月の登録台数は連続して2桁の伸びを示した。宮城県内のディーラー関係者は「東日本大震災の津波で車が流された経験から、安価で小回りの利く軽自動車が重宝されている側面もある」と推測する。
エコカー補助金による需要の先食いから復調しつつある自動車販売。今後の上乗せ要因となる消費税増税前の駆け込み購入は、「既に始まった」「まだこれから」と関係者の見方は分かれる。
販社の多くは需要のピークを1月の初売りと見定めるが、納車が来年4月以降にずれ込めば適用税率は現行5%が8%に跳ね上がる。「人気車種は納車が間に合わない可能性がある」として販売促進策の前倒しを検討する会社も出ている。
年度末が近づけば、恒例の決算セールが始まる。ディーラー各社は年明け以降、新車の一時保管場所の確保、増税をにらんだ納期に追われることになりそうだ。