東北6県の観光振興の指針となる「東北観光基本計画」の策定委員会は20日、2013年度からの新計画案をまとめた。東日本大震災や原発事故で落ち込んだ観光客数などを最終の17年度までに震災前水準に回復させることを明記した。防災・減災の体験プログラムの開発支援や海外への情報発信などを具体的な取り組みに挙げた。
計画案は6県の観光客入り込み数を、観光庁の共通基準による実人数ベースで、10年実績の9464万人以上を目指すとした。11年は7844万人に減っていた。
外国人延べ宿泊者数も10年の50万5400人以上を目標に掲げた。11年は6割減の21万人に落ち込み、現在も原発事故の風評被害で震災前の4~5割にとどまる。
基本方針には「震災からの観光復興」を盛り込んだ。記憶の風化防止を念頭に、防災体験のほか、被災地での語り部ガイド育成などを支援する。
震災で生まれた被災地とボランティアの交流や絆も重視し、再訪問につなげる。陸中海岸国立公園(岩手、宮城県)から移行する三陸復興国立公園などを生かし、復興ツーリズムの充実も図る。
自治体の地域防災計画における観光客の位置付けも見直す。災害時の避難誘導体制を整備し、観光客も含めた避難場所や備蓄などを確保する。
外国人客誘致(インバウンド)では正確な放射能情報の発信に努め、風評を一掃。外国人客向けの語り部や体験プログラムを用意し、震災を伝える解説板などの多言語化を進める。東北の冬をアピールするプロモーションも強化し、首都圏と東北、北海道を結ぶ「新たなゴールデンルート」を構築し海外に発信する。
策定委は6県副知事と観光業界代表、学識経験者らでつくる。新計画案は仙台市内であった第2回会議を了承された。3月12日の東北地方交通審議会で正式に決定され、東北運輸局長に答申される。