外国人旅行客の増加を目指す東北各県が、台湾からの観光客に熱い視線を送っている。仙台-台北線の定期便が10月から毎日運航となるのを追い風に、各県は さらなる誘客増を図る構えだ。現地で東北の知名度はまだ低く、6県一体の観光ブランドづくりとPRが今後の鍵になりそうだ。(報道部・大橋大介)
<「一人負け状態」>
「青森は『ラッセラー、ラッセラー』のねぶた祭」「テレビドラマ『おしん』の古里、山形です」。台北市で8月下旬にあった東北観光推進機構主催の台湾・日本東北交流懇談会。東北6県の知事らが各県のセールスポイントを現地の観光関係者らに売り込んだ。
2015年に訪日した外国人の延べ宿泊者数は約6050万人。うち東北は約52万人で1%にも満たない。「一人負け状態」(吉村美栄子山形県知事)を打開しようと今回、東北の各県知事が海外で初めて合同の観光PRを展開した。
東日本大震災からの復興策として、政府は20年までに東北の延べ宿泊者数を現在の3倍に当たる150万人に増やす目標を掲げる。各県は仙台空港からの直行便があり、親日家が多い台湾に誘客の照準を定める。
15年の台湾から東北6県への延べ宿泊者数は約18万人で、全体の3分の1を占めた。韓国(5万8000人)、中国(約5万5000人)を上回り、「最も重要なパートナー」(宮城県観光課)と位置付ける。
<毎日運航が実現>
ただ、台湾で東北の知名度は浸透していない。台北市の旅行会社幹部は「台湾人は北海道や京都をまず旅行先に選ぶ。東北の優先順位はまだ低い」と明かす。
15年の台湾から北海道への延べ宿泊者数は約143万人で、東北6県の8倍に達する。推進機構の清野智会長は「これまで東北は他地域に比べてPR努力が足りなかった。観光ルートの構築などで各県がしっかり協力する必要がある」と一層の連携強化を訴える。
仙台と台湾を結ぶ定期便は10月から、現在の2社計6往復から3社計10往復に増え、毎日運航が実現する。天〓旅行社(台北市)の杜佩育社長は「直行便数 は観光客数に直結する。東北への観光客は3、4割増えるだろう」と分析し、東北と台湾の観光を巡る新たな時代の到来を予想する。
宮城県の村井嘉浩知事は8月下旬、台湾の航空3社を訪ね、定期便の継続と増便を訴えた。村井知事は「定期便の定着には東北と台湾の双方にメリットがある関係を築く必要がある。仙台空港から台湾への観光客を増やすことも重要だ」と話した。
(注)〓は敬の下に手