東北電、冬に備え東電から融通枠拡大 331万キロワットに

 東北電力は24日、東京電力から受電できる融通電力の上限を現状の206万キロワットから331万キロワットに拡大すると発表した。秋までの電力不足は回避できる見込みとなっているものの、暖房需要が高まる冬場に備えて融通量拡大を図ることにした。上積みは29日から。ただ今後は企業の生産回復も見込まれ、楽観視できない状況が続きそうだ。
 森下和夫常務は24日の記者会見で、冬場に向けた自社独自の供給力について「(現状では)かなり不足するだろう」と指摘。東電からの融通に加え、東日本大震災の影響で停止中の火力発電所の復旧工事を急ぐ方針を示した上で、「今冬までに(復旧が)間に合うことを期待したい」と、一部火発の運転再開の可能性にも言及した。
 125万キロワットの融通電力の上積みは、東北電と東電の変電所を結ぶ連系線「いわき幹線」などを通じて行う。同幹線は震災の影響で2回線のうち1回線が不通となっていたが、29日に完全復旧する見通しとなった。
 震災では、太平洋側にある東北電主力の火発が甚大な被害を受けた。このうち新仙台火力1号機(仙台市、出力35万キロワット)と、東電と共同出資する相馬共同火力新地発電所1、2号機(福島県新地町、ともに出力100万キロワット)は、今冬までの運転再開の可能性があるという。
 森下常務は当面の電力需給について「残暑も見込まれるが、東電からの融通もあり、強烈に逼迫(ひっぱく)することはない。計画停電は原則として実施しない」と強調した。一方、冬場に関しては不足の恐れを指摘し「需給状況を精査している」と説明した。
 東北電管内では震災による火発停止に加え、7月の新潟・福島豪雨で出力計100万キロワット分の水力発電所が運転を停止し、電力不足が深刻化。今月8日に供給余力(予備率)が5%を下回ったことなどを受け、翌9日に東電からの融通量の上限を206万キロワットまで拡大した。実際に受電したこれまでの融通電力の最大量は10日の170万キロワットだった。

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