東北電、抜本的な値上げ検討 対象163万件、家庭向け一部も含む

東北電力は21日、工場やビル向けの全ての電気料金と、家庭や商店向けの一部の電気料金について、抜本値上げを含む具体的な検討に入ったと表明した。対象となる契約は企業と家庭を合わせて約163万件。燃料価格の高騰などで電気を売るほど赤字になる「逆ざや」が続き、料金を改定しなければ安定供給に影響すると判断したとみられる。

 改定の検討は2000年以降に段階的に進んだ電力小売り自由化後に設けた「自由料金」が対象。工場やビル向けの特別高圧(契約電力2000キロワット以上)と高圧(50キロワット以上、2000キロワット未満)は計約6万1800件の契約が全て該当する。

9年ぶり赤字決算

 家庭や商店向けの低圧(50キロワット未満)の場合、「よりそう+eねっとバリュー」「よりそう+ファミリーバリュー」などの自由料金の契約は約157万件。「従量電灯B」「従量電灯C」など自由化前の「規制料金」で契約中の約531万件は、今回の検討の対象外。

 値上げは、1キロワット時当たりの契約単価を引き上げるほか、低圧の自由料金で自主的に導入している燃料価格の変動分を転嫁する燃料費調整制度の上限を撤廃する手法があり得る。高圧以上には燃調制度の上限はない。

 東北電は事業撤退するなどした新電力からの切り替えを求める企業は、卸電力市場の値動きを反映する料金プランでのみ新規契約を受け付けている。高圧以上の料金改定は、単価と消費電力量で料金が決まる従来プランでの受け付け再開も視野に入れた動きとなる。

 東北電は、燃料価格高騰や最大震度6強を観測した3月の地震の影響で、22年3月期連結決算で1083億円の純損失を計上、9年ぶりの赤字決算となった。東北電が21日公表した21年度の部門別収支によると、規制料金部門は42億円の黒字に対し、自由料金部門は952億円の赤字だった。

 東北電は「あらゆる業務のコスト削減に努めているが、このままでは安定的な燃料調達や電力設備の更新・修繕などへの投資を十分に行えない」と説明する。

 東北電が電気料金の改定を決めれば、東日本大震災後の13年9月以来となる。

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