東北電力は23日までに、東京電力福島第一原発事故により財務上の損失が発生したとして、東電に損害賠償を請求する方針を固めた。建設を断念した浪江・小高原発(浪江町・南相馬市)への185億円以上に上る投資費用や、避難区域となった双葉郡を中心とした県内の電気料金減収分などが対象になる見通し。東北電は東日本大震災の津波で発電施設に大きな被害を受けた。経営状況も厳しく、東電に対する請求は避けられないと判断した。
東北電は浪江・小高原発の用地取得費用などとして185億円以上を投資した。しかし、原発事故を受け計画に対する地元の反発が強まったことから建設を断念。「原発事故は計画が白紙になった要因の一つ」として損害賠償の対象に含める。投資した費用のうち請求する範囲について、原子力損害賠償紛争審査会の指針を参考に社内で検討を進めている。
原発事故で双葉郡を中心に住民が県内外に避難し、他の地域でも自主避難が相次いだとして県内の電気料金の減収分も請求する方向。震災前の平成22年4月の県内販売電力量は13億4800万キロワット時だったが、震災直後の23年4月は前年比約30%減の9億8900万キロワット時となった。こうした状況が、東電に損害賠償を請求する裏付けになるとみている。
避難区域内の富岡、浪江両町にあったサービスセンターの営業損失分についても支払いを求めていく考えで調整している。