東北電力が、火力発電所の燃料に水素やバイオマスを活用する試験を相次いで実施している。同社は2030年度に発電事業の二酸化炭素(CO2)排出量を13年度比で半減させる目標を掲げる。水素などの本格活用に向けた検討を進めながら、火力の「脱炭素化」の可能性を探る。
東北電は10月、新潟火力5号系列の1号機(新潟市、出力5万4500キロワット)で、燃料の液化天然ガス(LNG)に水素を体積比で約8%混ぜて試験運転した。CO2排出を2・4%減らす効果があるという。体積比8%は、同社のガス火力発電設備を改修せずに水素を安全に利用できる最大量に相当する。
昨年10月には、同発電所で体積比1%の水素を混ぜて試験を実施した。ガスと蒸気のタービンを組み合わせたコンバインドサイクル方式の火力発電として、国内初の試みだった。今後は、さらに出力の大きい別のLNG火力でも水素を活用した試験を予定する。
石炭を燃料とする能代火力3号機(秋田県能代市、出力60万キロワット)では11月13~15日、木材や植物を加熱して炭化状にしたバイオマス燃料「ブラックペレット」を重量比で20%混ぜて燃焼試験を実施した。CO2排出量を約16%削減する効果があるという。
石炭火力は地球温暖化を理由に、CO2排出対策のない発電所の廃止に向けた国際的圧力が強まっており、東北電も対応を急ぐ。自社の石炭火力発電所で、アンモニアを混ぜた燃料試験を実施する計画もある。
水素やブラックペレットの本格活用には、安定的な調達網の確立や発電設備の改修、コスト面などが課題になる。東北電は「試験を段階的に実施し、課題に対応しながら火力の脱炭素化を目指す」と説明する。
東北電は30年度までにCO2排出量を13年度の5045万トンから半減させる目標を掲げる。うち火力部門で700万~1000万トンの削減を想定。水素やバイオマスの利用のほか、発電所の建て替えやCO2回収技術の調査研究を進める。