仙台市のガス事業民営化を巡り、東北電力などでつくる企業グループは28日、事業継承者の公募に申請した。公営で全国最大となる約34万戸の顧客基盤を持つ市ガスのポテンシャルを高く評価し、名乗りを上げた。今回の公募で申請が明らかになったのは初めて。
グループの代表は東北電が務める。同社は「競争戦略上の理由」として構成企業を公表しない方針だが、関係者によると、東京ガス(東京)と石油資源開発(同)、地元のカメイが参画しているとみられる。
グループは事業性を見極め、事業方針のほか、安定供給と保安の体制、譲り受け希望価格などを盛り込んだ提案審査書類を来年3月上旬までに市に提出する。
東北電の樋口康二郎社長は28日の定例記者会見で「市ガスの円滑な事業継承は東北のエネルギー市場、地域経済において大変重要だ」と強調。2016年に電力、17年に都市ガスの小売りが全面自由化された経緯を踏まえ「電気とガスのセット販売などさまざまなサービスが展開できる。快適で安全、安心なサービスを提供する『スマート社会』の実現にもつながる」と参入の意義を強調した。
河北新報社の取材に対し東京ガス広報部は「応募も含め、あらゆる可能性を検討中」、石油資源開発広報IR部は「応募するかどうかを含め公表予定はない」と回答。カメイは「地元のエネルギー会社として役割があるのであれば参画したい」と説明した。
08年の前回公募時は東北電、東京ガス、石油資源開発の企業グループが唯一応募したものの、リーマン・ショックに端を発した景気悪化のために辞退した。
公募期限は29日。市は提案審査を経て、来年5月下旬に優先交渉者を決定し、22年度中に事業譲渡する。