東北電の値上げ認可、33年ぶり抜本見直し 来月実施

茂木敏充経済産業相は6日、東北電力が申請していた家庭向け電気料金の引き上げを認可した。上げ幅は平均8.94%。料金体系を抜本的に見直す値上げは33年ぶりで、9月1日に実施される。
 改定後の標準的な家庭の月額料金は、約330円上がり7050円程度。実際の料金は毎月の燃料価格の変動を自動的に転嫁する制度を反映し、7481円となる。使用量に応じて値上げ幅は大きくなる。
 東北電の海輪誠社長は記者会見で「お客さまに多大な負担をお願いし、深くおわびする」と述べ、役員報酬を8月から当面の間、最大70%程度自主返上することを明らかにした。社内取締役の平均報酬額は約2000万円になる。
 料金改定は東日本大震災による設備復旧費や原発停止の長期化で燃料費が膨らんだのが要因。東北電はことし2月、平均11.41%の値上げを申請した。経産省の専門委員会は人件費などを削減できるとして、上げ幅の圧縮を求めていた。
 認可のため経産省を同日訪ねた海輪社長は、上田隆之資源エネルギー庁長官に「被災地を抱える電力会社として全社一丸となって徹底した効率化に努める」と述べた。
 東北電は7月の値上げを目指していたが、審査の遅れから2カ月ずれ込むことになった。認可が不要な企業向け料金も、家庭向けの改定に連動して15.24%値上げする。
◎14年3月期の予想売上高、初の2兆円
 東北電力は6日、未定としてきた2014年3月期連結決算の売上高について、前期比12.1%増の2兆100億円に上るとの業績予想を発表した。料金の本格改定が同日正式決定したのを受け、値上げによる増収を880億円と見込んだ。利益予想は、不確定要素が多いとして引き続き未定とした。
 同社の売上高が2兆円を超えるのは初めて。記者会見した海輪誠社長は、円安基調による燃料費調整制度に基づく増収や、国に納める再生可能エネルギー付加金が含まれているとして「実力として2兆円企業には至っていない」と説明した。
 東日本大震災の発生後、同社は3期連続の純損失を計上している。今期決算の黒字転換の可能性について、海輪社長は「何とか達成したい。効率化を前倒しで進める」と述べるにとどめた。
 同社は国への値上げ申請に際し、料金原価に年平均806億円の効率化策を織り込んだが、最終的にさらに年平均333億円の原価低減を求められた。申請段階の効率化計画も現時点の達成状況は4割程度にとどまる。
 海輪社長は「相当の覚悟でやらなければならない。効率化の深掘りをピッチを上げて進める」と強調。7月に社内に設置した調達改革委員会で議論を進めるなど、資材調達費や燃料費、人件費の一層の削減に向けた検討を深める考えを示した。
◎値上げは仮設住民の負担考慮
 東北電力の海輪誠社長は6日、仙台市青葉区の本店で記者会見し、9月1日の電気料金引き上げについて「仮設住宅のお客さまの負担を抑える料金設定にした」などと説明し、東日本大震災の被災者に負担増への理解を求めた。主なやりとりは次の通り。
 -被災地への影響は大きい。
 「被災者は厳しい生活をしており、値上げは心苦しい。ただ、生活に不可欠な使用量(120キロワット時)までの値上げ幅を極力小さくするなど、被災地向けの料金制度を意識して作った。何とか影響を緩和したい」
 「(東京電力など)他の電力会社は企業向けを先行値上げしたが、われわれは家庭向けと同時期にした。被災地の基幹産業である水産・冷蔵業などに省エネのコンサルタントをしっかり行う」
 -今後の再値上げの可能性は。
 「現時点では、これ以上の負担はお願いできないと考える。歯を食いしばって効率化を進める」
 -原発再稼働を目指す方針に変わりはないか。
 「原発なしにこの料金(水準)は長続きしない。燃料費の増大は避けられず、再稼働があって初めて安定的な黒字化が達成できる。電力供給の安定に原子力は必要だ」

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