東北電力女川(おながわ)原発1号機(宮城県女川町、石巻市)で1998(平成10)年、原子炉が緊急停止したのに国などに報告せず、運転日誌にも記載せずに事実を隠蔽(いんぺい)していたことが12日までの社内調査で分かった。緊急停止の隠蔽は東京電力の柏崎刈羽(新潟県)、福島第二(福島県)の両原発で発覚したばかりで、東電以外では初めて。対外的な説明を避けようとする原子力業界の体質が問われそうだ。
東北電力は原子炉緊急停止を速やかに国に報告するよう求めている原子炉等規制法に違反していた疑いが強いとしており、12日、経済産業省原子力安全・保安院に経緯を説明した。原子炉等規制法違反については既に3年の時効が成立している。
東北電力の小林(こばやし)邦英(くにひで)常務は12日、宮城県庁を訪れ「先週知り、当時の関係者に事実確認をしていた。今回の事態を深くおわびしたい」と謝罪した。
村井(むらい)嘉浩(よしひろ)宮城県知事は「ルールを守っていなかったことは甚だ問題だ。相当反省しないといけない」と述べた。
東北電力などによると、隠蔽された緊急停止は98年6月11日未明に発生。原子炉を手動停止させようと出力を徐々に下げていく最中に、一部のモニターで中性子量の増加が検出されたため炉が自動的に緊急停止した。
しかし東北電力は、電力使用量が増える夏場に向け復水器や海水の取水設備、原子炉格納容器内の機器の点検などを実施し17日には発電を再開していた。
保安院は東電などのデータ改竄(かいざん)、隠蔽が相次いだため、全電力会社に対し、3月末までに過去の不正などをすべて調査して報告するよう指示している。
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【女川原発】
宮城県女川町から石巻市にかけて立地し、1号機(出力52万4000キロワット)は1984年、2号機(82万5000キロワット)は95年、3号機(同)は2002年にそれぞれ営業運転開始。いずれも沸騰水型軽水炉(BWR)。今回問題となった1号機では、05年に耐震設計の想定を一部上回る揺れを検知して原子炉が自動停止したほか、06年に冷却用海水温度データの改竄(かいざん)が発覚している。
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