東北電管内、新電力シェア急落12%台 燃料高で4年前の水準に

東北電力管内(東北6県と新潟県)の新電力の販売電力量シェアが下がり続けている。ロシアのウクライナ侵攻に伴う燃料価格の高騰で事業休止や撤退が相次ぎ、現在は12%台と4年前の水準に逆戻りした。各社は料金改定などで収支改善を図り、反転攻勢を狙う。(報道部・関川洋平)

料金改定 収支改善図る

 新電力シェアの推移はグラフの通り。2016年4月の電力小売り全面自由化以降、上昇が続き、21年12月に過去最高の16・1%を記録。だが昨年4月から7カ月連続で減少し、最新の11月で12・3%と12~13%台だった18年後半並みに落ち込んだ。

 昨年2月のウクライナ侵攻で電力業界は、燃料価格や卸電力市場価格の高騰に直面した。帝国データバンクによると、新電力706社(21年4月時点)のうち昨年11月28日時点で146社(21%)が倒産や撤退、契約停止を余儀なくされた。

 全国の法人を対象に小売電気事業を展開するエネット(東京)は、東北の契約件数に関し「最大契約口数だった時期よりは減少している」と明かす。料金が割高と判断して契約を更新しない客がいたことや新規契約の受け付けを一時停止したことが影響したという。

 東北電管内で家庭や商店向けの低圧の契約者が電力会社を切り替えた「スイッチング」の件数はグラフの通り。切り替え全体に占める、新電力から東北電に移行した契約者の割合は昨年4月以降に増加。同11月には新電力からの離脱が初めて1万件を超えた。

 FPS(東京)は昨年9月、家庭など向けの低圧事業からの撤退を表明。契約件数は非公表だが、1月末までに全契約者が他電力に切り替えた。一方、事業継続中の法人向けの高圧と特別高圧は「世界的なエネルギー価格の高騰を加味した提案をしている」という。

 電力業界は値上げラッシュだ。東北電は4月に家庭向けの低圧規制料金で平均32・94%、低圧自由料金で同7・69%の値上げを計画する。法人向けの高圧・特別高圧料金の標準メニューに、卸電力市場価格の変動を反映する仕組みを導入する方針も発表した。

 青森県を除く東北5県の生協組合員に電力を供給するコープでんき東北(仙台市)は、東北電の値上げ幅を参考に4月以降の料金改定を検討する。東北電より料金を抑えれば価格競争力で上回れるが、「燃料価格の動向などが不透明なことは変わらない」と慎重だ。

 エネットは昨年12月に新規契約の受け付けを再開し、1月に4月以降の料金の引き上げを表明した。同社は「販売量は電源調達状況とのバランスで決まるので早めに問い合わせてほしい。今ならいい提案ができる」と、減少した契約の奪還に意欲を見せる。

 一方、ある新電力関係者は「今年は燃料高騰の経験に基づき、電力各社が市場連動メニューを増やす『市場連動元年』。固定価格より契約内容を比較しづらく(電力会社を乗り換える)自由化の効果が出にくい。新電力の体力はすぐには回復しないのでは」とみる。

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