全国の知事が気にするランキングが毎年10月に発表される。
民間調査会社「ブランド総合研究所」(東京)がまとめる「都道府県魅力度ランキング」だ。東北は宮城県の13位が最高で青森17位、秋田24位、岩手、福島がともに34位。山形は38位と昨年より順位を下げた。ランキングは都道府県の人気を示すだけではなく、地域の課題なども示唆し、知事のトップセールスにも影響を与えている。(柏崎幸三)
調査は、47都道府県の魅力度や認知度を20~70代の約3万人以上を対象に「魅力的だ」と肯定的に回答した人の比率をランキング化。昨年ワースト3だった茨城、栃木、群県の北関東の3県だが、今年は群馬41位、栃木43位と脱出。栃木県の福田富一知事は「地域資源の磨き上げや戦略的な情報発信、県の愛着と誇りの醸成に取りくんだ」と1年間の努力に胸を張った。
一方の茨城県。NHK朝ドラ「ひよっこ」では有村架純さんが演じるヒロインが同県の架空の村「奥茨城村」出身という設定で、ロケ地になった県北部の6市町は「茨城県北『ひよっこ』推進協議会」を設立。土産品にロゴマークを付けるなど攻勢を仕掛けたが、5年連続最下位だった。
■リンゴ知事、青森
東北地方はどうか。6県中トップは宮城県が多い。東日本大震災の翌年の平成24年は21位に甘んじたが、ランキングの順位は13~18位を維持。続いて青森県が安定的に14~25位をキープ。秘訣は職員自身がやりたい事業を提案する「庁内ベンチャー制度」にある。17年度に始まった「まるごとあおもり情報発信グループ」は東京都内の新聞や雑誌、テレビなどを利用して県の露出度を高めていった。
青森県企画調整課の奥田昌範グループマネジャーは「青森には、ねぶたや大間のマグロなど尖(とが)ったコンテンツがたくさんありますから」と自慢する。コンテンツの強さを利用して大手旅行会社などと組んで旅行商品を共同開発し、誘客を伸ばす。
視線は国内だけではない。リンゴは日本の輸出量の約9割が青森県で、うち8割が台湾向け。「リンゴといえば青森というほど台湾で有名。毎年訪問する三村申吾知事は台湾の新聞に“リンゴ知事また来る”なんて書かれるほど」と県誘客交流課の三上洋輝(ひろのぶ)課長。
また、青森空港はソウル、天津便と国際定期路線が2便あり「青森県は北海道の隣の県、函館の東南」といったPRが奏功。北海道を訪れた台湾や韓国からの観光客が「函館→青森→東京」といったルートで青森に急増、知名度もグンとアップしている。こうした地道な努力がランキングに好結果をもたらした。
■低下傾向の山形
「行ってみるまでわからない」「宣伝下手」といわれる山形。優しく、穏やかな県民性が魅力的だが、残念なことに、魅力度ランキングは、当初の20位台から最近は30位台後半と低迷。このランキング自体を知らないという吉村美栄子知事も毎年6月、サクランボの帽子を被り東京などで宣伝するが、県の魅力アップはまだまだ不足のようだ。
「情報を統括してPRする部署が県庁にはなく、横の繋がりが取れていない。他部署の取り組みがわからないことも多い」(県広報推進課)とタテ割行政の悪弊が原因にもなっている。
今年6月にようやく副知事をトップに各部局の報道監が参加した「戦略広報会議」が立ち上がった。県内外への情報発信の手法を構築し、魅力度ランキングで40位台にならないため、本格的に動き出した。