難問で知られるクイズ番組「東大王」(TBS)が9月末で終了すると報じられた。タレントとなった伊沢拓司(30)を筆頭に多くの東大スターを生み出したが、最近、視聴率が落ち込んでいることが原因だという。だが、ここに来て他局から、視聴率以外の問題を指摘する声が……。
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6月19日放送の「東大王」は「東大王VS難関中学! 関東名門校SP」の3時間特番だった。毎年、東大合格者を多数輩出する関東の中高一貫校、開成中学(東京)、麻布中学(東京)、聖光学院中学(神奈川)、栄東中学(埼玉)、市川中学(千葉)の中学入試の問題を基にした難問クイズが出題された。
つまり小学6年生が中学受験で出題された問題である。なぜ「東大王」で中学の入試問題? という疑問も湧くが、どうしてどうして、さすがは名門難関校である。東大王チームも悪戦苦闘していた。
セカンドステージは番組名物となった「難問オセロ」で、この日は動物園にいる動物漢字からの出題だった。「トラ」が「虎」でも「寅」でもなく「於菟」である。さすがの東大チームも全滅して、芸能人チームが史上初の勝利に。
続くラストステージとなったところで、番組の様子がガラッと変わった。
ナレーション:続いては、餃子にチャーハン、CookDoにクノールカップスープなどなど日本の主婦の強い味方、味の素から意外に少ない学べるクイズを全6問出題!
出題VTRにはタレントで放送作家の野々村有希子とその長女が登場。スーパーの店内を巡りながら味の素製品の秘密をクイズ形式で問うというコーナーとなり、正解の解説には味の素の社員も登場した。
「放送できません」のレベル
1問目は、チャーハン市場で万年3位だった味の素の冷凍食品が1位を取った革命的商品として「ザ☆チャーハン」を紹介しつつ、「パラパラ感を出す冷凍方法は、空中で凍らせるのか? 液体窒素で凍らせるのか?」という2択問題に(正解は空中で凍らせる)。
2問目は、20年連続売上No.1の冷凍ギョーザ、「出荷前に厳しくチェックしているのは、ロボットか? 人間かと?」いうもの。正解は味覚の鋭い社員が実際に食べて確認していた。
以降の問題も同様で、人気商品を紹介して出題する形式となり、いずれも択一式。何だか突然、別の番組に変わってしまったようだった。民放プロデューサーに聞いた。
「私もよくできたインフォマーシャル(スポンサーとコラボしたCM)かと思って見ていました。ところが、これがなかなか終わらない」
“味の素スペシャル”は21時23分から番組終了まで30分以上も続いた。
「念のため、うちの局のコンプライアンス委員にこの件を聞いてみたら、『放送できません』『編集し直してください』というレベルだそうです」
どういうことだろうか。
「放送法第12条には《放送事業者は、対価を得て広告放送を行う場合には、その放送を受信する者がその放送が広告放送であることを明らかに識別することができるようにしなければならない》とあります。我々も耳にタコができるほど聞かされてきた『本編でCMを行ってはならない』という大原則です」
そうだったのか。
番組終了の最後っ屁?
「また『民放連放送基準解説書2024』には広告の取扱いについて《番組において商品・サービスなどを紹介する際、取り上げ方や演出方法などによっては、広告の意図や目的がなくとも、視聴者に「広告放送」であるとの誤解を招く場合があるので、この点にも十分配慮し、放送に当たる必要がある》と明記されています」
その割にはCMっぽい番組を見たことがあるが、
「もちろん、視聴者への有益な情報として、企業や商品を取り上げることは可能です。最近はCMが売れないので、枠やスポットを買ってもらうため、企業や商品とのコラボやインフォマーシャルをよく見かけます。とはいえ、放送法があるので1社だけの露出はNGで、他社も加えて公平な論点から評論する。もし1社、もしくは1商品になってしまった時には、長所短所も含めてできるだけ辛口の評論の形を取ることにしています」
今回の「東大王」はベタほめで、かなり甘口だった。“味の素スペシャル”の終盤にはCookDoの「回鍋肉」から視聴者プレゼントクイズが出題され、さらに、優勝した芸能人チームには“豪華!味の素商品詰め合わせセット”が贈られた。
「9月末での番組終了が決まって、営業も制作も『ええい、やっちゃえ!』でやったのかもしれませんね。『東大王』がまだ続くのであればミソをつけてはならないので、絶対、慎重になるはずですよ」
デイリー新潮編集部