東日本大震災4年/被災地首長アンケート/再生へ手応えと不安

東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県の自治体首長アンケートでは、多くが地域再生の取り組みに一定の手 応えを感じている一方、復興財源の先行きを不安視している様子が浮かび上がった。震災発生から間もなく4年。人口流出や財政難など、復興後をにらんだ懸念 も膨らみつつある。

◎復興度合いと阻害要因/自治体職員の不足際立つ

それぞれの自治体の復興の進み具合について尋ねた ところ、全体の7割以上が「かなり進んだ」「まあまあ進んだ」と回答した。県別では岩手、宮城の首長の8割以上が前向きな評価だったのに対し、福島は半分 程度にとどまった。東京電力福島第1原発事故に伴う被害の深刻さを物語った。
「かなり進んだ」「まあまあ進んだ」を選んだのは、岩手が12市町村の首長のうち10人、宮城が15市町のうち14人、福島が15市町村のうち8人。「かなり-」の回答は久慈市、岩手県岩泉町、仙台市の3人にとどまり、大半が「まあまあ-」だった。
アンケートでは復興の阻害要因についても聞いた。主な回答の県別の構成はグラフの通り。最多は「自治体のマンパワー不足」(12人)となり、「原発事故」(9人)、「作業員不足」(5人)、「住民合意形成」(4人)などと続いた。
その他の回答では、「資材・労務単価の高騰」(久慈市)、「除染」(福島県浪江町)との声があった。

◎風化/9割以上が実感

岩手、宮城、福島3県の被災自治体の首長のうち、9割以上の39人が震災の風化を実感していることが分かった。多くが報道量の減少を理由に挙げており、震災から5年目を迎えるに当たり、関心が低下することへの懸念が深まっている。
風化を「ある」と答えたのは岩手県山田町や気仙沼市、田村市など24人。大船渡市や仙台市、いわき市など15人が「多少ある」と答えた。
「あまりない」と答えたのは岩手県洋野町、宮城県松島町の2人にとどまった。「ない」との回答はなかった。
県別で見ると「ある」との回答割合が最も高かったのは福島(11人)の73.3%。岩手(6人)は50.0%、宮城(7人)が46.7%だった。

◎5年目の取り組み/生活・産業・インフラに力

震災5年目となる2015年に力を入れる政策(三つまで複数選択)を聞いたところ、全体の半数以上の人が選んだのが「暮らしの再建」「産業再生」「道路、 防潮堤などインフラ整備」の三つだった。県別集計はグラフの通り。各県の最多回答には、直面する課題の違いも映し出されている。
岩手県は対象12首長のうち9人が「人口増・住民定住」を挙げた。復興まちづくりの進展をにらみ、域外避難者の帰還に備える姿勢を示したとみられる。宮城県では15首長のうち11人が「インフラ整備」と回答した。
原発事故に伴う避難が続く福島県。15首長のうち9人が「暮らしの再建」を選び、復興の道のりの厳しさを印象付けた。「除染」(7人)、「風評克服」(4人)との回答も目立った。
その他の回答でも「避難解除・帰村宣言時期の設定」(飯舘村)、「住民帰還の環境整備」(楢葉町)があり、原発事故後の重い課題が浮き彫りになった。

◎今後の懸念/トップは高齢化

自治体運営に当たる上での今後の懸念材料(三つまで複数選択)は、全体では半数以上が選んだ「(住民の)高齢化」がトップとなった。最多の回答は県ごとに 異なり、宮城が「高齢化」(12人)だったのに対し、岩手は「税収減・財政難」(9人)。多数の域外避難者を抱える福島は「住民帰還」(9人)となった。
県別で2番目に多い回答はいずれも「人口流出」(宮城9人、岩手、福島とも7人)だった。福島では「除染」(4人)、「(新旧)住民の融和」(3人)との指摘も目立った。原子力災害特有の事情を映したとみられる。
「その他」では「生活再建の方針が定まらない人への支援」(仙台市)、「復興特需後の経済的影響」(いわき市)といった記述もあった。

◎国などへの主な要望 集中復興期間の延長/人的な支援策継続/原発事故の風評対策/鉄路復旧へ積極関与

国などへの要望を自由に記述してもらったところ、多くの首長から復興財源の確保を求める意見が寄せられた。「使い勝手の向上」「弾力的配分」といった表記も目立っており、硬直化した補助制度に不満が募っていることをうかがわせた。
今後の支援策先細りへの不安は財源問題にとどまらない。復興事業の本格化をにらみ、複数の首長が課題として「自治体のマンパワー不足」を指摘。人材派遣の継続を要望した。
このほか建設資材費や労務費の高騰への懸念も目立った。岩手、宮城の首長を中心に、「自治体の財政負担が増えている」「入札不調が発生している」などとして対策を求めた。

・「復興に向けた2016年度以降の姿勢、考え方の提示」(清水敏男いわき市長)
・「集中復興期間の延長」(大橋健男宮城県松島町長ら多数)
・「16年度以降の復興交付金継続」(戸田公明大船渡市長、斎藤貞宮城県亘理町長ら多数)
・「復興財源の確保」「財政支援の継続」(阿部秀保東松島市長、渡辺善夫宮城県七ケ浜町長ら多数)
・「地域の文化、歴史を踏まえた弾力的な財源配分」(佐々木一十郎名取市長)
・「復興予算の使い勝手の向上」「使途の柔軟化」(冨塚宥〓(日ヘンに景)田村市長、宮本皓一福島県富岡町長、松本允秀葛尾村長ら多数)
・「自由度の高い交付金創設」(古川道郎福島県川俣町長)
・「復興事業に関する補助制度の弾力運用」(須田善明宮城県女川町長)
・「建設資材の高騰抑制や財政支援」(遠藤譲一久慈市長、佐藤信逸岩手県山田町長、柾屋伸夫普代村長、佐藤昭塩釜市長)
・「人的な支援策の継続」(山本正徳宮古市長、鈴木勝雄宮城県利府町長、遠藤雄幸福島県川内村長ら)
・「原発事故に伴う風評被害対策」(水上信宏岩手県洋野町長)
・「鉄路復旧への積極関与」(菅原茂気仙沼市長)
・「減災・防災研究拠点の整備」(亀山紘石巻市長)
・「農地の宅地化に向けた柔軟対応」(菊地啓夫岩沼市長)
・「震災の教訓を踏まえた災害法制の見直し」(奥山恵美子仙台市長)
・「災害公営住宅整備計画の前倒し」(伊沢史朗福島県双葉町長)
・「賠償の格差是正」(遠藤智福島県広野町長)
・「省庁間の連携強化と、スムーズな賠償に向けた指導」(馬場有福島県浪江町長)
・「若年層が帰還しない中での自治体運営への配慮」(菅野典雄福島県飯舘村長)
・「国には風化防止のための情報発信、県には横の連携強化を求める」(碇川豊岩手県大槌町長)
・「責任の明確化」(桜井勝延南相馬市長)
・「一日も早く、という視点を」(戸羽太陸前高田市長)
・「歴史を総括して次代に一歩を」(石原弘岩手県田野畑村長)

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