●USJ
大阪市のテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の8月の入場者は前年同月比6%増の133万人となり、これまでの最高を記録した。7月15日に映画『ハリー・ポッター』をテーマにした新エリアがオープンした効果で、開業年の2001年8月(132万人)を上回った。13年ぶりの記録更新である。売上高は前年同月比22%増の160億円で、こちらも月間最高を記録した。これまでは01年8月の140億円が最高だった。
運営会社、ユー・エス・ジェイの森岡毅・執行役員は「正直言って150万人を超えられると思っていた」と悔しさをにじませる。今年の夏は西日本で雨の日が多く、大阪では8月、日中に雨が降った日が14日に上ったことが響いた。しかし、その中で月間最高売上高を達成したというのだから、「ハリポタ効果」は絶大だったといえよう。
この最高記録を牽引したのは、関東と海外からの入場者だった。USJはこれまで関西圏以外の入場者は4割にとどまっていたが、7月以降は6割にまで上昇した。一方、関西圏の入場者数は昨年を下回り、こちらは雨の影響を受けた。10月にはハロウィーン関連イベントがあり、月間133万人を抜くという予想もある。
●あべのハルカス
そんな好調なUSJとは対照的に苦戦を強いられているのが、近畿日本鉄道が約1300億円を投じて今年3月に全面開業した、日本一高い超高層複合ビル・あべのハルカスだ。
ハルカスの来場者は全面開業した3月7日から8月31日までの178日間で2200万人。1日当たり12万3600人弱で、目標の13万人を下回った。地上300メートルの展望台は人気だが、中核施設あべのハルカス近鉄本店の客足が伸び悩んだ。ハルカスの来場者数の年間目標は4740万人で、このうち百貨店は4500万人と95%を占める。百貨店の来店客数は8月末時点で目標を14%下回っている。購買には結びつかず、売上高は計画を2割下回った。
そこで近鉄百貨店は15年2月期通期の見通しを下方修正した。連結売上高は前期比4%増の2870億円で、従来予想(3047億円)を170億円強下回る。連結営業利益も従来は前期比2.4倍の74億円を見込んでいたが、35%増の41億円にとどまる。また、連結最終利益は前期比3%増の10億円になるとの見通しを明らかにした(従来予想は4.3倍の42億円)。特に、あべのハルカス近鉄本店の若い女性向け専門店街ソラハが不振なのが響いた。
3月7日のあべのハルカス全面開業に合わせ、あべのハルカス近鉄本店の売り場面積は10万平方メートルと日本最大となったが、売り上げが伸び悩んだことが全体の足を引っ張った。同店の売上高(百貨店部分の売上高と専門店部分の賃貸収入の合計)は期初予想の1210億円から1030億円へと180億円引き下げたが、1030億円の達成も難しいだろう。
全面開業してからの1カ月間は1日当たり14万人が来店したが、4月以降は消費増税前の駆け込み需要の反動もあり、計画通りには進まなかった。14年3~5月期連結決算でも本店売上高は前年同期比37%増の273億円にとどまり、年間で41%増としてきた計画を割り込んだ。総菜などの食品や紳士服、家庭用品などの売り上げが計画に届いておらず、中でも前出・ソラハが苦戦している。
百貨店は、全面開業1年目は目新しさもあり、よほど無謀な計画でなければ売り上げ目標を達成できるといわれているが、あべのハルカスは全面開業半年で早くも目標を下回るペースで推移しており、まさに大誤算となっている。
大阪は繁華街に百貨店がひしめくオーバーストア状態といわれており、首位は阪急うめだ本店(売上高1922億円/14年3月期)、2位が高島屋大阪店(同1206億円/同2月期)。あべのハルカス近鉄本店(同916億円/同2月期)は3位だった。大増床で売上高1210億円の目標を掲げ、2位の高島屋大阪店と肩を並べるというもくろみが外れた。これから目新しさが薄れ集客力が落ちてくる中、いかにリピーターを確保するのか。年末年始商戦が正念場となる。
●東京スカイツリー
一方、「東の観光スポット」に目を転じてみると、東京の新名所、東京スカイツリーを運営する東武鉄道は外国人観光客を増やすことに力を入れている。開業3年目を迎え、来場者数は伸び悩んでいる。14年4~6月期の来場者数は前年同期比15万人減の141万人。商業施設や水族館などを含むスカイツリータウン全体では同200万人減の845万人だった。新規来場者が一巡したことが大きいとみられている。
旅行サイトのトリップアドバイザーが調査した「行ってよかった日本の展望スポット2014」によると、スカイツリーは前年の2位から8位に順位を落とし、6位から3位に順位を上げた東京タワーと明暗を分けた。スカイツリーはリピーターの確保に苦戦している様子がうかがえる。
運営する東武鉄道は、手をこまねいているわけではない。昨年、スカイツリーを訪れる外国人観光客の国別調査を行い、外国人客は6.8%だった。内訳は台湾が19%で最も多く、台北市の超高層ビル、台北101(508メートル)とスカイツリー(634メートル)の両方に登ると記念品をもらえるようにするなど、台湾での営業活動に力を入れ始めた。今後は、20年の東京五輪をにらみ、台湾、香港などアジア圏からの観光客の取り込みに力を入れる。
東西の目玉観光施設は、早くも明暗が鮮明になりつつある。
(文=編集部)