(パ・リーグ、楽天6-2ソフトバンク、5回戦、ソフトバンク3勝2敗、18日、フルスタ宮城)楽天の黄金ルーキー、田中将大投手(18)=駒大苫小牧出=が、18日のソフトバンク戦(フルスタ宮城)にプロ4度目の先発。デビュー戦でKOされた鷹打線を相手に9安打を許しながら、13奪三振の快投を演じ、2失点でプロ初勝利を完投で飾った。高卒ルーキーの4月中の完投勝利&2ケタ奪三振は、99年の西武・松坂大輔投手(現レッドソックス)以来。“北の怪物”が、雄たけびをあげた。
ようやく、この瞬間が訪れた。1万3209人のスタンディングオベーションが、怪物ルーキーを包み込む。勝利の輪の中で、田中は短く刈り上げた頭を、先輩たちからポカポカたたかれた。
「最高です! うれしい痛みです。最高の舞台で初勝利ができてよかったです!!」
初めてのお立ち台で、声のトーンは1オクターブ上がった。4戦目の先発。まだ勝ち星のない新人は、いきなり大ピンチを迎えた。一回、1点を失い、なお無死満塁。小久保、大村、ブキャナンを3連続三振に斬って取って波に乗った。
気温7度の寒さの中、右手親指にできた血マメで満足に直球が投げられない逆境を乗り越えた。140球の熱投で、MAXは149キロながら奪三振は13。高卒ルーキーの4月中の完投勝利も2ケタ奪三振も、99年の西武・松坂以来の快挙だ。
「オレ、二軍に行った方がいいんですかね…」。球団スタッフにつぶやいたのは、3月29日のこと。デビュー戦でソフトバンクに二回途中6失点でKOされた。甲子園のヒーローはキャンプから注目されたが、期待を裏切れば、待っているのは厳しい視線と声。それから20日間、心は揺れた。
「投手は“お山の大将”でええんや。荒々しく、堂々と投げんか」
現役時代、杉浦忠、江夏豊らを支えた名捕手、野村監督がアドバイスを送った。紀藤投手コーチも「オマエはどういう投手になりたいんだ? オマエらしさを出せ。新人だって相手を見下して投げたっていいんだ」と支えた。マウンドでは、ルーキーもベテランも関係ない。「お山の大将」だった高校時代の自分を取り戻した。
五回二死一、二塁。松中を迎えた。デビュー戦で得意のスライダーを先制二塁打された鷹の主砲に、同じボールで向かっていった。「ボクの腕の振りは前とは違う。思い切りふところ(内角)に入れてやろうと思った」。松中のバットは空を切った。20日間で取り戻した「自分らしさ」を証明してみせた。
「見下ろして投げられました。自分で“変えなきゃ”と思って、変われた。満足はしてます。でもこれからですから。自分に勝ちがつかなくても、チームに勝ちがつく投手になりたい」
今度は、チームを変える番だ。前日17日の永井とルーキー2人で、過去2シーズン一度もなかったソフトバンク戦の3連戦勝ち越しを果たした。これが第一歩。田中が、新たな歴史の扉を開け放った。(加藤俊一郎)
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