松島ジオパーク 復興の礎に 景観生かす手法探る

学術的に重要な地質遺産や災害遺構などを公園として活用する「ジオパーク」に着目し、東日本大震災からの復興やまちづくりの在り方を考える研究集会「松島の自然景観とその成り立ち-松島ジオパークへの旅」が8日、宮城県松島町の町中央公民館で開かれた。
 講演で、東北学院大教授の松本秀明氏(地形学)が「縄文時代の海面上昇でできた松島湾は、現在の海面の高さがこれ以上でもこれ以下でも特徴が失われる。奇跡の景観と言える」と述べた。
 東北大名誉教授の谷口宏充氏(火山学)は、被災した宮城県沿岸をエリアとする「南三陸海岸ジオパーク」構想を紹介。「松島にはジオパークの構成要素が全てそろっている」と強調した。
 パネル討論では東北大名誉教授の永広(えひろ)昌之氏(地質学)が「ジオパークの視点で地域を見直すと違う輝きを見いだせる。地元住民が観光客や研究者を案内するツアーを企画できないか」と提案した。
 松島観光協会長の佐藤久一郎氏は「松島を訪れた人に気軽にまち歩きをしてもらい、地域の人々の暮らしや文化を伝える時期が来た」と訴えた。
 瑞巌寺宝物館課長の新野一浩氏は、伊達政宗による瑞巌寺創建以前の古代から中世の松島の宗教的文化財に触れ「現在目に見える文化財の背後にある歴史の厚みを広める活動をしたい」と強調。
 震災復興計画の中にジオパークの取り組みを盛り込んだ大橋健男松島町長は「少子高齢化が進む中、持続的なまちづくりの道具としてジオパークを使っていきたい」と語った。
 進行役を務めた宮城大教授の宮原育子氏(地域資源論)は「松島にはまだまだ未知の宝がたくさんあると分かった。ジオパークを復興のメニューに加えてもらえるといい」と締めくくった。研究集会は東北地理学会の主催で、松島町が共催。町内外から約170人が参加した。
 河北新報社は震災からの復興と東北の発展に向けた提言で、三陸沿岸のジオパーク構想を実現し、被災地に地域再生ビジターズ産業の集積を進めるよう提案した。

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