松本人志の「タウンワーク」 CM好感度急上昇の理由

松本人志が様々な人物にふんして「バイトするならタウンワーク」と呼びかけるリクルートジョブズの求人メディア「タウンワーク」のCM。CM総合研究所が発表する銘柄別CM好感度ランキングで上位の常連だが、今年に入り順位が急上昇。2月度9位、3月度5位に続いて、4月度は自己最高となる2位につけ、初のトップ3入りを果たした。乃木坂46の生駒里奈や、ロックバンドWANIMAとの共演が話題を呼び、CM好感度を押し上げた。

2位となった4月度の調査で、票を集めたのは「コーヒーショップ編」と「スタジオ編」。2月20日から放送が始まったコーヒーショップ編では、松本がコーヒーショップの店員にふんして、「お願いしま~す。バイト~するなら~タウンワ~ク~」と客からの注文をコールする。すると、生駒をはじめとしたスタッフたちが口々に「バイト~するなら~タウンワ~ク~」と笑顔で復唱。さらに松本は「バイト~するなら~マシュマロチョコチップタウンワ~ク~」と早口言葉のようなオーダーを口にして、生駒もドリンクをつくりながら復唱。最後は松本が「タウンワーク多めで」と追加オーダーをコールして締めくくる。
3月28日からのスタジオ編では、松本がロックバンドWANIMAのメンバーとして登場。音楽スタジオでWANIMAの3人が新曲『ララバイ』をレコーディングしていると、ギターを弾いていた松本が突然演奏をストップさせて、「歌詞を変えよう」と提案。「バイトするならタウンワーク」と歌ってみせ、きょとんとするメンバーたちをよそに「なんか今、すっげー降ってきたな」と自画自賛する。さらに30秒バージョンでは、WANIMAが松本の提案した歌詞で歌うものの、松本が「元に戻そう。意味わかんないわ。無理があった」と手のひらを返すシーンが加わっている。

■バイト探しを離れ、設定を重視

 松本人志がタウンワークのCMに起用されたのは2015年7月。最新作のスタジオ編で16作目というから、約1カ月に1本のハイペースで新作が登場している。

リクルートジョブズによると、「まずは楽しんでもらいたいので、視聴者の方に飽きられる前に新作を投入しています。CMの目的は、バイト探しをしたいと思ったときに一番に思い起こしてもらえること。そのため、シンプルなコピーにしました。それをインパクトを持ってしっかり伝えられる人として、ユーモアや強さを言葉にのせられる松本さんが最もふさわしいと考え、お願いしました」(マーケティング部集客プランニンググループの吉野奈那子さん)と松本を起用した理由を語る。
松本が出演するシリーズになって以降、タウンワークは銘柄別CM好感度ランキングのトップ10に8回入っており、ランキング上位の常連となっている。視聴者の反響を反映しながら、シチュエーションを少しずつ変えてきているのが功を奏しているようだ。
開始当初は、若者がバイトについて話していると、突然松本が現れて「バイトするならタウンワーク」と言うといった、バイト探しに寄った内容だった。だが、15年11月から放送した「魚河岸」編でバイト探しから離れて、競り人にふんした松本が、突然お決まりのフレーズを言うようにしたところ、面白いと評判が上がった。それ以降は、松本が場違いなタイミングで現れて、フレーズを言う設定の面白さやインパクトを追求する路線に変わった。

■旬の共演者が好感度を後押し

 また、16年10月からは、バイト探しのメインターゲットである高校生や大学生に人気のある若いタレントを共演者にして、松本とのからみの面白さを訴求。その流れで起用したのが、人気絶頂の乃木坂46のメンバーである生駒里奈や、10代20代に人気のロックバンドWANIMA。それぞれメイキング映像や、WANIMAの新曲を長く聴ける1分動画を公開したことで、「ファンの方を中心に、話題が拡散している手応えを感じました」(前出・吉野さん)という。旬の共演者の話題性も、CM好感度を押し上げたようだ。
CM総合研究所の関根心太郎代表は、「クリエーティブ・ディレクターの浜島達也さん(電通)は、山田孝之出演の人気シリーズ『ジョージア』も手がけており、ユーモアのセンスにあふれ、設定やストーリーの作り方が大変上手。タレントさんの魅力を引き出すのにたけた方で、『タウンワーク』でも、その手腕が光っています」と作り手の側から好調の理由を分析する。
スタジオ編の撮影時も、松本がWANIMAの演奏をストップさせてからのやりとりではアドリブが全開。松本は言い回しを面白おかしく変えながらセリフを繰り返し、スタッフは撮影中に笑いを押し殺すのが大変だったという。そうした松本の変幻自在な演技を最大限に引き出す設定へのこだわりや、共演者との絶妙なバランスが、「タウンワーク」のCMを面白くしている。
松本は近年、バラエティー番組を仕切る役回りやコメンテイターとしての活躍が目立つ。発言がネットニュースやSNSで話題になるなど、ご意見番としての役割も増えている。大御所のイメージが強まるなか、タウンワークのCMは1人のお笑い演者としての松本の面白さを楽しめる数少ない場といえるだろう。
(日経エンタテインメント! 小川仁志)
■調査対象期間:2017年3月20日~4月19日(東京キー5局)■当月オンエアCM:全2860銘柄■東京キー5局でオンエアされたすべてのCMを対象に、関東在住の男女モニター3000人に、好きなCM・印象に残ったCMをヒントなしに自己記述してもらい、その得票数を足し上げたもの■同商品の複数作品にオンエア・好感反応がある場合、代表作品は最もCM好感度の高い作品■企業・銘柄名・作品名はCM総合研究所の登録名称であり、正式名称と異なる場合がある

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