民放テレビ各局が深夜ドラマに力を入れている。松田翔太主演の『ディアスポリス‐異邦警察 ‐』(TBS系)、前田敦子主演の『毒島ゆり子のせきらら日記』(TBS系)、剛力彩芽主演の『ドクターカー』(読売テレビ・日本テレビ系)など、いずれ もプライムタイム(19時~23時)のドラマで主演を張れるクラスの人気俳優を起用。年に数本、大ヒット作は出るものの、ドラマの視聴率が振るわないこの ご時世に、各テレビ局は、なぜ深夜ドラマに意欲的なのか?
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東海テレビは、奥様方に愛された“昼ドラ”の52年の歴史に幕を下ろし、今クールから「オトナの土ドラ」という深夜枠を新設。ユースケ・サンタマリア主演 で『火の粉』(東海テレビ・フジテレビ系)をスタートさせた。これはもはや新しい時代の幕開け。話題づくりだけではなく、各局、着々と深夜枠を増強し、定 番化を狙っているようにも見える。
それはなぜか。1つには、若者世代が(生活習慣的に)プライムタイムのドラマを見ない、という背景が ある。前クールで視聴率が良かったドラマは、『相棒』『スペシャリスト』『科捜研』(いずれもテレビ朝日系)など高い年齢層を狙ったと思われる刑事ものば かり。そんな中、下手にプライムタイムのドラマに出演し、“低視聴率俳優”のレッテルを貼られるよりも、深夜でのびのびと、面白い題材にトライしたい!と いう俳優陣が増えていることも、少なからずテレビ局の編成に影響を与えているのだろう。
また、深夜ドラマは、少し過激な題材に挑戦でき る自由さ、適度な笑いとゆるさが、カルト的な人気を獲得することもあった。「視聴率?何ですかそれは」的な深夜ドラマならではのヤンチャなスタンスは、テ レビ局にとっては諸刃の剣だろうが、実は長い目で見れば良いことがたくさんある。例えば『モテキ』(大根仁監督)は、深夜帯で若者のハートをしっかり掴 み、映画化されて大ヒット。一方、『勇者ヨシヒコと魔王の城』(福田雄一監督)は、視聴率では振るわなかったが、DVDが爆発的に売れて、ムンクの叫びか ら、えびす顔に変わった。
視聴率が良かろうが悪かろうが、映画化への道を拓いたり、オリジナルコンテンツとして2次利用できたり、“面 白いドラマ”を作っていれば、いつか報われる時が来る(全部じゃないが…)という深夜ドラマの法則は、プライムタイムに莫大なお金や労力を注ぐよりも今や 堅実。さらにもう1つ言わせていただければ、視聴率の呪縛から解き放たれ、自由に創造力を発揮できる場は、才能豊かな若手クリエイターをぐんぐん成長させ てくれる。第二の大根監督を探しながら、今クールの深夜ドラマを楽しんでみるのもいいかもしれない。(文・坂田正樹)