株主総会の紙資料、廃止か存続か 来年からウェブ掲載義務化 上場企業が取り扱いに苦慮

株主総会資料をウェブサイトに掲載する電子提供の義務化を受け、宮城県内の上場企業が紙資料の取り扱いに頭を悩ませている。制度上はこれまで通りの紙資料を株主に送る必要はなくなるが、インターネットに不慣れな株主もいるため完全な切り替えには慎重な企業が多い。総会のデジタル化は簡単には進みそうにない。(報道部・関川洋平)

慎重派「賛否の判断に関わる」

 新制度は来年3月1日以降の株主総会に適用される。総会の日時や場所を記した招集通知は引き続き書面で送る一方、議案や事業報告の資料は電子提供に移行するため、原則として送らなくてよくなる。ただ、多くの企業は株主の利便性に影響が出ることを懸念し、部分的でも紙資料を残す道を模索している。

 東証プライム上場でタイヤ、ホイール販売のフジ・コーポレーション(富谷市)は「議案説明は株主の賛否の判断に関わるので紙資料を作る」と説明。前回総会の紙資料44ページのうち議案説明は9ページ。残り35ページの事業報告は電子提供のみに切り替え、一定程度の経費削減も狙う構えだ。

 東証スタンダード上場のソフトウエア開発、サイバーコム(仙台市)は次回総会で紙資料の内容を減らす予定はないとし、「急な変更で株主に不便をかけないことが第一」と強調する。資料のウェブ掲載は今までも自主的に実施しており、義務化後も作業は大きく変わらないという。

積極派「印刷不要、熟議可能に」

 「これまで通りなら制度改正の意味がない。できるだけ電子に移行したい」と前向きなのは、東証スタンダード上場の液晶ガラス基板製造、倉元製作所(栗原市)。紙資料は印刷の都合上、総会1カ月前に内容を固める必要があり、印刷が不要となる電子化で議案の詳細を詰める時間をより長く確保できると期待する。

 紙資料をなくすと、総会当日の議事運営への影響も予想される。ある企業の担当者は「『お手元の資料をご覧下さい』という説明が当たり前には使えなくなる。来場した株主に紙資料を配ったら何のための電子化かという話だし…」と苦笑いする。

 新制度で企業が紙資料を用意する必要が一切なくなるわけではなく、株主は期限内に個別に請求すれば紙資料の提供を受けられる。

 東証プライム上場の東北電力の場合、6月末の総会の紙資料を入手するには3月末までに手続きしなければならない。脱原発東北電力株主の会は9月、東北電に対し、新制度の周知を求める要望書を提出。東北電は11月29日、紙資料の請求方法を説明する文書を全株主に送った。

 法務省は「新制度は紙資料を禁止する内容ではない。個人投資家と機関投資家の割合、株主の年代構成など各社の実情に応じた対応になる」との見解を示す。

[株主総会資料の電子提供]議案と提案理由、事業報告などの資料をウェブサイト上で株主に提供する制度。9月施行の改正会社法で上場企業の義務となり、来年3月の株主総会から適用される。資料は従来は総会2週間前までに発送する決まりだったが、今後は総会3週間前までのウェブ掲載が必須となる。株主が議案を検討する時間を増やすのが狙いで、省資源化などの効果も見込む。

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