根付かない定額制サービス 高齢者にとって使い勝手が悪い

音楽に動画に、雑誌、カフェ、英会話、家電、自動車、カメラ……数え上げればキリがないほど身近な存在になってきた「定額制サービス(サブスクリプション)」。

 紙おむつ最大手のユニ・チャームは、今年初めから保育園向けに、乳幼児が使う紙おむつを定額で使い放題とするサービスを本格展開。同社によると、メーカーによる紙おむつの定額導入は業界初。ちなみに、週5日登園の0歳児が月額3240円、1歳児が同3024円、2歳児が同2700円だ。

 さまざまな定額制サービスで、消費者にとっては便利でお得な世の中になったと思いきや、しかし、意外にも利用者は少ないようだ。

 リサーチ会社「マイボイスコム」が3月に10~70代の男女1万489人に行った「定額制サービス」に関するインターネット調査では、直近1年間で利用したことがある人は2割だった。「(今後)利用したいと思う」「まあ利用したいと思う」の合計も約2割。利用したいジャンルは、Netflixhuluなどの映像配信サービスが53.3%、spotifyなどの音楽配信サービス、電子書籍・雑誌、電子コミックが20%強と人気。その他には演劇やコンサート、飲食店、日帰り旅行、温泉通い放題のサービスを望む声もあった。しかし、「利用したいと思わない」「あまり利用したいと思わない」の合計は約5割と、気が進まない消費者が半数もいる。

 思ったより社会に根付いていない定額制サービスについて、生活経済ジャーナリストの柏木理佳氏はこう言う。

「いいサービスだとは思いますが、便利なようで不便な感じもする。今や消費の中心は高齢者。高齢者はパソコンやスマホを介して会員登録することやお金を支払うことにアレルギーを持つ人が少なくありません。実際、パスワードを忘れたり、間違ったりしたときは、面倒くさいし、時間もかかる。若い世代には便利なシステムでも、高齢者にとっては逆に使い勝手が悪いのでしょう。ユーザーになりそうな若者はお金を持っていない。定額のまとまったお金を払えないから躊躇するケースもあるはず。それも利用者が思ったより少ない理由ではないでしょうか」

 普及のための策はないのか。

「今まで以上に高齢者に対して親切なサービスが必要です。何かあった時に被害を最小限にするためにプリペイドカードを発行したり、人によるアナログなサポートも重要でしょう。若者にはお得感をもう少しアピールし、ユーチューブなどの動画で説明するのも宣伝効果があると思います」

 普及するまで、もう少し時間がかかりそうだ。

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