こいのぼりが泳ぎ回るには少し肌寒い朝だった。僕は最近、新人達のお守りを任され、少し疲れてきていた。
その目は、総務部長、社長、青竹副部長、新藤君が慌ただしく動き回っていた。そんな中、根掘部長が現れた。根掘部長と総務部長は揃って社長室に吸い込まれて行く。
午後になり、その事態は沈静化したようだった。僕は青竹副部長に何かあったかたずねた。
「根掘部長さぁ、また事故ってさ、こんどは廃車だって。」
「えっ、またですか?」
根掘部長の事故はこれで2回目であった。
「また、きのう飲みに行って、4時くらいに帰ったんだって。ついに居眠りして、根掘部長の家のすぐそばのガードレールに突っ込んだんだって。それで、朝の5時くらいに新藤君に電話して、迎えに来てもらって、宮城新田自動車に電話して、引き取りに来てもらったんだってさ。僕もさっき、宮城新田に行って来たんだけど、前輪の片方がないんだよ。よく怪我しなかったなぁって不思議なくらいだよ。」
「無事でなによりだけど、社長また、怒り出すんじゃないの?。」
「まっ、いつもの様になるでしょ。」
新藤君が眠そうな目をこすって帰って来た。僕はすかさず声をかけた。
「新ちゃん、どこ行って来たの?。」
新藤君は機嫌悪そうに答えた。
「ゴルフ場。」
「なんてまた?。」
「今日、根掘部長事放ったのは知ってるよね。で、今日、根堀部長と社長は接待でゴルフなんだよ。車を廃車にしてもゴルフに行くって言うから、俺に送って行けていうんだ。いいかけんにしてほしいよ。あわれブルーバード。根掘部長に運転されなかったらもっと長生き出来だのに。」
こう言って新藤君は不機嫌そうに笑った。
翌日、いつもの様に社長室から怒鳴り声が会社中に響いていたのであった。
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