宮城県塩釜市の浦戸諸島・桂島でカキ養殖に取り組む一般社団法人「浦戸夢の愛ランド」が、クラウドファンディング(CF)で後継者育成の資金を募っている。東日本大震災後に9人いたカキ漁師は高齢化などで3人に減少し、新型コロナウイルスの影響で入札価格は低迷している。代表理事の三浦勝治さん(75)は「島のなりわいが存続の危機にひんしている」と協力を呼び掛ける。期限は10日まで。
浦戸のカキ養殖の歴史は1600年代にさかのぼるとされ、桂島には最盛期に30人以上のカキ漁師がいた。今も続けるのは三浦さんと60代以上の2人。後継者は三浦さんの下で見習いとして働く大場智行さん(47)と、もう1人の男性(51)の2人だけという。
ここ3年は高齢などを理由に引退が続いた。カキ養殖に欠かせない共同処理場の維持費は利用者で分担しており、1人当たりの負担額が増加している。いかだの設置など共同でないと難しい作業もあるため、なりわい維持には後継者育成が急務となっている。
新型コロナがカキ養殖に与える影響も深刻だ。10キロ当たりの平均入札価格は例年1万5000円前後だったが、漁期が終了した今季は半額以下の6000~7000円に落ち込んだ。
販売収入は来季の養殖の資材費などに充てるが、年明けからの販売不振で原資が不足している。
CFの目標金額は200万円で、2000~5万円のコースを設定した。出資者には金額に応じた返礼品としてかきの薫製のオイル漬けやむきかきを贈るほか、島暮らし体験も用意。体験は今月から受け入れ、商品はカキの収穫が始まる10月下旬に発送する。
大船渡市出身の三浦さんは岩手県職員や教材販売会社社長を務めた後、桂島の活性化に関わったことがきっかけで震災直前の2011年2月に移住。津波で自宅が流され、高台の災害公営住宅に暮らす。
移住後、高齢化で廃業が相次ぐカキ養殖を守ろうと、地元漁師の元で技術を学び、70歳をすぎて漁協の正組合員になった。漁業ツーリズムも企画し、交流人口の増加にも取り組む。後継者を育てようと受け入れた見習いの大場さんは、漁協の准組合員となった。
浦戸諸島で最も人口が多い桂島には3月末現在で143人が居住。震災直前と比べて88人減少した。三浦さんは「後継者の育成が桂島の生活と産業を守ることにつながる。まずは移住した2人を立派なカキ漁師にし、カキ養殖の伝統を次代に引き継ぎたい」と話す。