桜の古木のびょうぶ絵 大阪の漫画家が松島・瑞巌寺に奉納

 東日本大震災の犠牲者の鎮魂と復興を願い、大阪市の漫画家武田秀雄さん(65)が、桜の古木を描いたびょうぶ絵を宮城県松島町の瑞巌寺に奉納した。早ければ5月の連休中にも仮本堂に展示される。
 「讃華(さんげ)」と題したびょうぶ絵は、縦1.8メートル、横3.1メートルが一対となった四曲一双。武田さんは金箔(きんぱく)の下地に墨や水干(すいひ)絵の具を使い、木肌に直接、無数の桜の花を描いて生命の息吹を表現した。
 武田さんが被災地で見た、朽ちたり津波で流されたりした桜の木から着想。日本画を描くのは初めてだったが、ことし1月末から一気に描き上げた。
 武田さんは1こま漫画の風刺画を得意とし、タブーに挑むブラックユーモアと大胆なエロチシズムの作風が特徴。1976年に文芸春秋漫画賞を受賞したほか、93年には英国の大英博物館で漫画の個展を開いた。
 2012年11月、仙台市で個展を開いた際、気仙沼市から松島町まで車で回った。震災の被害と復興の遅れを目の当たりにし、被災地の代表的な寺院への絵の奉納を思い立った。
 瑞巌寺で奉納式が営まれた8日、吉田道彦住職ら僧侶がお経を上げ、武田さんは知人の音楽家藤井允人さん(71)=京都市=と共に参列した。
 武田さんは「震災への私の思いは、全てこの作品にある。多くの方に見てもらい、何かを感じ取ってほしい」と話した。

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