桜前線「南下」に温暖化の影 鹿児島より福岡が先に開花 冷え込み不足で目覚めず

「桜前線の北上」が今は昔になりつつある。ここ20年 ほど、九州ではソメイヨシノは北部の方が先に咲き、開花の地域が南に向かう南下現象が起きている。地球温暖化で、花芽が低温で目覚める植物のメカニズム 「休眠打破」がうまく働かないのが原因とみられる。このままのペースで温暖化が進めば、将来は開花しない地域も発生すると警告する専門家もいる。

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ヒマラヤ地方を原産地とする桜。日本で交配されて生まれたソメイヨシノは、明治時代から植樹され、日本の桜の8割を占める。

今年の九州のソメイヨシノの満開宣言は、3月30日に福岡市と長崎市、佐賀市で同31日、熊本市で4月2日に出された。日本気象協会は大分市と宮崎市を同5日、鹿児島市は同6日と予想している。

桜の開花の南下は、沖縄県に咲くヒカンザクラに見られていた現象だったが、1990年代以降は九州のソメイヨシノでも見られるようになった。気象庁の開 花記録によると、60年代は鹿児島市や宮崎県延岡市が全国で最も早く開花し、差が顕著な場合は1週間以上遅れて福岡市で開花という状況だったが、今では福 岡市の方が鹿児島市より約1週間早い年もある。九州以外の地域では、今でも北上傾向が見られる。

福岡管区気象台は、大きな原因を温暖化とみる。ソメイヨシノは秋に芽を付けたまま休眠に入る。休眠から覚めるには春までの間に一定期間低温にさらされる 必要がある。九州・山口県の3~5月の平均気温は、100年前から1・8度上昇しており、福川雅三調査官は「もともと暖かかった南部の気温がさらに上昇 し、北部に比べて休眠打破に必要な寒い期間を確保しにくくなり、開花が遅れがちになっている」と指摘する。

今世紀末のソメイヨシノの開花状況は…

 このまま温暖化が進めばどうなるのか。九州大の伊藤久徳名誉教授(気象学)らが今世紀末のソメイヨシノの開花状況をシミュレーションした。九州南部など の暖地は開花時期がさらに遅れる。九州北部から関東までが3月下旬ごろ一斉に開花、4月以降に九州南部と東北の南部で咲く。桜前線北上の現象は東北地方で のみ残る。九州や太平洋側沿岸を中心に開花しても満開にならない地域が増え、九州南部の一部では開花しない地域も出てくるという。

伊藤名誉教授は「ソメイヨシノは気温に敏感で、開花の状況は温暖化と密接に関係している。鹿児島県の種子島では既に開花しても満開にならない年もあった。日本人にとってとても身近な花だけに、温暖化を防ぐ努力が大切だ」と話している。

=2016/04/04付 西日本新聞朝刊=

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