― 30代が知らないと恥ずかしい! 今さら聞けないお酒のキホン第44回 ―
今日は酒税法のうんちくです。みなさんの家庭でも梅酒を作って飲んだことがあるかもしれません。もちろん合法なのですが、「当然!」というわけでもありません。実はいくつか条件があるのです。
◆梅はOKだけど……。知っておきたいNG品目
焼酎に梅を漬けて梅酒を作るのは、酒造していることになります。アルコール度数1度以上のお酒を造る場合は、酒類製造免許が必要なのです。しかし、消費者が“自ら”飲むために、買ってきた20度以上のお酒に漬けたものなら製造行為ではないと認められています。ただし、漬けてはいけない品目もあります。
まず、アルコール度数20度以上のお酒ということなので、日本酒や酒精強化ワインであれば超えているものもあるかもしれませんが、普通のワインはアウトです。一般的には焼酎やウォッカを使うことになるでしょう。そして梅はOKですが、ぶどうややまぶどうはアウトです。ほかには米、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ若しくはでん粉又はこれらのこうじも使えません。20度以上というのは、これ以上発酵が進まないというアルコール度数のラインです。
“自ら”というのは自分と同居の親族を意味しています。家族で飲むのはOKということですが、別のところにいる親のためとかホームパーティとかシェアハウスに住んでいる友達に振る舞うのはNGになりますね。また、当然“自ら”には法人を含みません。
ということで、ニッカウヰスキーがホームページで推奨している漬け込みウイスキーを家庭内で楽しむのはもちろんOKです。コーヒー豆やフルーツなら3~7日漬け込むと面白い味に仕上がります。
とはいえ、飲食店が一切NGというのはちょっと厳しいですよね。そこで特例が設けられました。条件はありますが、梅酒などをその場で消費するために提供することが可能なのです。
◆ぶどう以外のサングリアはありなのか?
条件は、基本的に自宅での梅酒造りと同じです。こちらもアルコール20度以上ですが、蒸留酒と明記してあるので、日本酒や酒精強化ワインは使えません。ぶどうや米などは漬けてはいけませんし、お土産用に販売するのもアウトです。量も決まっており年間1000リットルまでです。
さらに「特例適用混和の開始の申告手続き」を行い、特例を受けたいと申告する必要があります。もちろん、どのくらい仕込んだのかという報告も必要になるので、なかなか手間がかかります。
そう考えるとバーテンダーが作るカクテルは、基本的にアウトになりそうですが、もちろん合法です。酒税法43条10項に「前各項の規定は、消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない」とあるので、自分のお店の中で直後に消費されるカクテルについてはOKとなっています。
さて、問題はサングリアです。ぶどうを漬け込んだらアウトですが、それ以外のフルーツだったらどうでしょう?
これはワインの度数が20度以下なのでアウトです。自宅で自分で飲むためでも無許可での製造になってしまいます。20度以上の酒精強化ワインを使うなら言い訳もつきますが、普通のワインを使ったらアウトです。
クックパッドで「サングリア」と検索したらレシピが689件もヒットしました。みなさん楽しんでおられるようですが、くれぐれもSNSにアップしないようにしましょう。処罰されるかどうかはともかく、アウトなものはアウトです。
【柳谷智宣】
お酒を毎晩飲むため、20年前にIT・ビジネスライターとしてデビュー。酒好きが高じて、2011年に原価BARをオープン。2年前に海底熟成ウイスキーを扱う「トゥールビヨン」を立ち上げ、現在販売中