11日は、この日を境に梅雨入りするとされる「入梅」。だが今年は、沖縄、奄美地方以外はまだ梅雨入りしていない。近畿地方でも平年(6日)より遅れ、10日には京都市で最高気温が32.5度となるなど、各地で夏を思わせる日差しが照りつける。遅れる梅雨入りで、ビアガーデンなどは好調な半面、除湿機などの季節商品は出足が鈍り、田植えを迎えた農家も雨を待ち焦がれている。
■夏物家電も不調…高気圧が停滞、雨は今週末から
大阪管区気象台によると、近畿地方の昨年の梅雨入りは平年よりやや早い6月3日。過去30年で、最も遅かったのは昭和61年の6月16日で、最も早かったのは平成3年の5月26日だった。しかし、今年は日本列島の北に高気圧が強く張り出した影響で、梅雨前線は6月に入っても南の太平洋上に停滞したまま。このため、5月6日に梅雨入りした沖縄、奄美地方を除き、各地で梅雨入りが遅れている。
これに笑顔なのがビアガーデンだ。大阪市の阪神百貨店梅田本店の屋上ビアガーデンは、売り上げが昨年同期比3割増で、担当者は「やっぱり雨が降らないのが大きい」。このほか同店では、帽子や日傘といった紫外線対策の商品も昨年の2倍の売り上げだという。
「入梅」は、梅の実が熟する時期とも言われ、日本一の梅の生産量を誇る和歌山県みなべ町は、今が収穫のピーク。同町うめ21研究センターの平喜之さん(40)は「5月ごろに雨が多かったため、収穫量は3割ほど減りそう」というが、「今年は晴天続きで収穫作業もはかどる」。
一方、例年5月ごろから伸び始めるエアコンや除湿機、冷蔵庫といった夏物家電の売り上げは鈍い。「電機屋泣かせの天候のせいですわ」と話すのは上新電機(大阪市)の担当者。「じめじめした梅雨と暑い夏が待ち遠しい」と梅雨入りに期待をかける。
田植えが本格化し、これから水を必要とする農家も、今後の空模様を気にしている。兵庫県内で稲作や畑作が盛んなたつの市の農林水産課職員は「他の農作物には大きな影響は出ていないが、稲作はこれから水が豊富にいる時期。適度な雨がほしい」。
「あじさい寺」として知られる奈良県大和郡山市の矢田寺ではアジサイが5、6分咲き。梅雨の遅れと咲き具合に関連はないが、同寺大門坊の前川真澄住職(66)は「やっぱり雨にぬれたアジサイが風情があるでしょう」と語る。
では、関係者をやきもきさせる梅雨入りはいつごろになるのか。大阪管区気象台によると、今後は高気圧が弱まって梅雨前線が北上し、今週末あたりから雨が続くと予想されており、梅雨入りは週明けごろになりそうだという。