森永卓郎さん警鐘「年金13万円時代がくる!」50代からでも老後資金が間に合う支出の最適化とは

2056年には人口が1億人を割り、約4割にあたる3千750万人が65歳以上になる。今年4月に厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した推計が波紋を呼んでいる。

一方で少子化には歯止めがかからず、18~64歳の人口は5千46万人に。1人の高齢者を1.3人の現役世代が支えることになるという。いまの40代や50代が直面するのが年金の問題だ。

「私の試算では、団塊ジュニアの多くが後期高齢者となる2050年には、夫婦2人のモデル年金は、いまの月額約21万円より8万円少ない月額約13万円程度になります」

そう警鐘を鳴らすのは、経済アナリストで、『長生き地獄資産尽き、狂ったマネープランへの処方箋』(角川新書)の著者でもある森永卓郎さんだ。金融庁が2019年に発表して物議を醸した“老後2千万円問題”をご記憶の方も多いだろう。このときは、「年金支給額は減らない」という前提での試算だった。しかし、年金額が月額8万円も減るとなると、2000万円では到底足りない。

「2022年の家計調査によると、年金だけで生活している65歳以上の高齢夫婦世帯の支出は、1カ月あたり約27万円。生活水準を落とさないで、95歳まで生きたと仮定すると、約4650万円も赤字になります。現役世代は老後に向けて今から生活をダウンサイジングし、浮いた分を貯蓄に回さないと老後破綻は免れません」(森永さん)

2022年の「家計調査」(総務省発表)によると、50~59歳における世帯主の収入は約720万円と全世代で最も高い。その半面、消費支出も月約35万円と、こちらも全世帯で最も高い。つまり、50代には工夫すれば貯蓄を増やせる“伸びしろ”があるという。

「家計調査は全国平均のため、50代は特に家庭による差が大きい。バブルを経験した50~60代のご夫婦の場合、全体的に出費が膨らみがちな傾向があり、食費だけで月20万円というご家庭もありました」

そう指摘するのは、ファイナンシャルプランナーの秋山友美さん。

「だからこそ少しの工夫で貯蓄を増やせます。さらに空いた時間での副業などで、月にプラス10万円の貯蓄も不可能ではありません」

50歳から15年間、毎月10万円貯金できれば1500万円。退職金と合わせたら“老後資金4000万円”に手が届く可能性も出てくる。

■子どもの独立を機に保険の見直しを

では、どのようにして支出を削ればいいのか。秋山さんに節約ポイントを挙げてもらった。

「50代はゴルフなど趣味にお金を使う方も多く、『単に節約しましょう』と言うと嫌がります。ですから、節約を『支出の“最適化”をしましょう』と言い換えて、家計のダウンサイジングに前向きになってもらうのが重要です」

そのうえで、まず見直すべき項目は月々の“固定費”だ。

「固定費の一丁目一番地が携帯の“通信費”。なかには、大学生のお子さんの携帯料金まで親が支払っているご家庭もあって、月4万~5万円の出費になっている場合も。成人しているなら自分で支払ってもらい、かつプランや通信業者を替えるだけでも夫婦2人の携帯料金は月1万円以下にできます」

2つめのポイントは保険料だ。

「50代は、若いころに加入した保険を見直すチャンスです。子どもが成人しているのに多額の死亡保障付きの高額な保険に入り続けていたり、会社の団体保険と同じような保険に個人でも加入して保障が被っていたり。これらの見直しをすれば、保険料を月額1万円以内に収められる可能性があります」

次に、侮れないのが“サブスク”と呼ばれる定額サービス料金。

「携帯を契約したとき初期設定で付いているオプションサービスを解約しないまま支払い続けている方や、音楽などのコンテンツ配信サービスに登録したものの、〈まったく利用していない〉などという方も少なくありません。サブスクを点検して不要なものは解約を」

うっかり膨らみがちなのが家具・家事用品だ。

「床を拭くウエットシートなどは、便利だからと買いだめしがち。最近は、こうした掃除グッズも値上がりしているので、意識的に買わなければ月数千円の出費を抑えられます。エコの観点からも本当に必要なものなのか再確認を」

一方で、節約しにくい項目もある。住宅ローンの返済金や、高騰し続けている“光熱費”だ。

「都心に住んでいる方は、思い切って今の住宅を売って、“トカイナカ”に引っ越すのも手です」

そんなアドバイスをするのは、前出の森永さん。“トカイナカ”とは、都心から約30~50キロ圏の郊外のこと。

「トカイナカなら都心への通勤も可能ですし、何より今は住宅バブルなので都心のマンションを売って、その資金でトカイナカに中古の戸建てを購入すれば、1500万円くらいはおつりがきます」

さらに、トカイナカに住めば、光熱費はタダ同然になる可能性も。

「私は30年前から、都心から電車で1時間半以上かかる“トカイナカ”の戸建て住宅に住んでいます。太陽光発電パネルを設置し、十分電力は賄えていますので、年間の電気代は実質ゼロ円。初期投資は必要ですが、東京都の試算では10年ほどで回収できて、あとはタダになります」

さらに森永さんの場合は、約60坪の農地をタダで借りて野菜を作っているので、食費も半額になったという。ここまで極端な方法でなくても、工夫次第で食費は節約できる。

「和牛など贅沢品を食べたいときは、ふるさと納税を利用したり、地域振興のキャッシュレス決済でたまったポイントを利用したりすれば節約可能です」(前出の秋山さん)

■超低金利時代はiDeCoを活用

こうした節約を積み重ねれば、月約6万~7万円は貯蓄に回す額を増やすことができるだろう。投資や副業での収入を合わせれば10万円も見えてくる。

「投資といっても、50代以降から始めるのであれば、iDeCoやNISAなどの税制優遇を活用して少額から。超低金利の普通預金に預けっぱなしにしている人も少なくないので、せめて金利の高い定期預金に移すなど工夫しましょう」(秋山さん)

副業に関しては、主婦経験が生かせるハウスキーパーのマッチングサイトなどもある。スキマ時間を利用して賢く稼げば貯蓄の足しにできるだろう。50歳からの生活の見直しで、年金大減額時代に備えよう!

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