理化学研究所などのチームが合成に成功し、命名権が認められた113番元素の名称案「ニホニウム」の公表を受け、理研の森田浩介グループディレクター(九州大教授兼任)は9日、「共同研究者とも、やっと口に出して喜べる」と笑顔を見せた。
9日朝、新元素合成の舞台となった理研仁科加速器研究センター(埼玉県和光市)を視察に訪れた馳浩文部科学相を案内した森田さん。名称案は3月末までに国際純正・応用化学連合(IUPAC)に提出していたが、8日夜まで公表を禁じられていた。
4月に首相官邸で発見の概要を説明した時も名称案は言えなかったといい、「胸のうちにためていた名前を、きょうから『ニホニウム』と言えるところが大変、大変うれしい」と喜びを表現した。
昨年末に命名権を獲得。共同研究者と会議を開き、すんなりと決まったという。候補として「ジャポニウム」も取りざたされたが、森田さんは記者会見で「語 感に抵抗を感じる人もいた」と説明。1908年に小川正孝博士が43番元素として命名した幻の「ニッポニウム」に触れ、「強い思いがあったが、過去に出た ものは使えない。ニホニウムなら大丈夫だったので提案した」と述べた。
「基礎研究をさせてくださっている国民の皆さんに少しでも恩返しができる」と元素名に込めた思いを明かし、「周期表を見て、そこに日本のグループが作った元素があるんだと気づいてくれて、少しでも理科が好きな子が増えれば望外の喜びだ」と語った。
研究グループは113番元素合成に関する論文や、命名提案書などに「原発事故で傷ついた福島の人々にささげる」と加えた。森田さんは「原子力発電も原子 核を扱っている。(基礎科学が専門で)工業的応用は分からないが、非専門家といって逃げてはいけない。われわれができるのは科学の信頼を回復することだ」 と説明した。