総資産全米16位のシリコンバレー銀行(SVB)に続き、同29位のシグネチャー銀行が経営破綻した。米財務省などは全ての預金者を保護すると表明。バイデン大統領は声明で「米国の国民と企業は銀行預金が必要な時にそこにあると確信できる」と動揺しないよう呼びかけた。
松野官房長官は「日本の金融システムの安定に重大な影響を及ぼす可能性は高くない」と楽観的だが、市場関係者は「対岸の火事ではない。地銀がヤバい」と警戒する。破綻したSVBと日本の地銀のビジネスモデルがそっくりだからだ。
コロナ禍の金融緩和策を追い風にSVBはシリコンバレーのスタートアップ企業からの預金量を急増させた。一方、融資の伸びは鈍く、手持ち資金で債券を爆買いしてきた。しかし、金利の上昇を受け、債券価格が下落し、巨額の含み損が発生。今回、大口預金が引き出され、満期前に債券を売却してしのごうとしたが、思ったような価格で売れず、破綻に至った。
「黒田日銀による10年に及ぶ金融緩和で日本の地銀は金余りが常態化しました。しかし、地方経済は疲弊しており、融資先はなかなか見つからない。そこで地銀は国内外の債券を大量に購入せざるを得なかった。SVBと同じ構図です。金利上昇に伴い地銀の保有する債券の含み損は膨れ上がっています。日本の地銀の中にはSVBのような破綻予備軍は少なくない」(金融ジャーナリスト・森岡英樹氏)
アベノミクスのツケ
地銀が抱える国内外の債券の含み損は昨年12月末時点で3兆円に上る。米国は利上げを続ける見通しで、日銀もいずれ金利を上げる可能性が高い。債券の含み損はますます膨れ上がる恐れがある。
「地銀が金利上昇による含み損に苦しんでいるのは、アベノミクスのツケの一つです。市場にお金をジャブジャブにするだけで、2度の消費税増税により景気を冷やし、成長戦略はまったく描けなかった。SVBの破綻を目の当たりにした日銀の植田新総裁は地銀の含み損拡大について細心の注意を払わざるを得ない。利上げなど金融政策の修正はやりにくくなったと言えます」(森岡英樹氏)
含み損の急増を受けて金融庁は地銀約20行に対し、有価証券の運用体制を重点的に点検する方針だ。はたして地銀を1行も破綻させず「含み損問題」を乗り切れるのか。