オリックス生命ウェブ広告。「A社」「B社」のクリックで他社のサイトに
「この広告が出ることを金融庁さえ知らされていなかった」──。
オリックス生命が先月25日、同社ウェブサイトや新聞広告で開始した生命保険業界初の比較広告が業界に波紋を広げている。
ネット専業生保2社との保険料の差を前面に押し出し、ネット広告上の「A社」「B社」の文字をライフネット生命とネクスティア生命のウェブサイトに直接リンクさせる手法に「社名を伏せた意味がない。やり過ぎだ」(ネット生保幹部)との恨み節も漏れる。
だが、それ以上に業界をあぜんとさせたのが、その“サブマリン”的な発表の経緯だ。
比較された両社だけならまだしも、監督官庁である金融庁でさえ、オリックス生命が広告を出すことを公に予告した22日になって知り、同社に問いただして初めて広告の中身を知らされたという。
無論、広告内容を事前に知らせる規則はない。だが、「われわれには金融庁と事前協議しないという発想が浮かばない」と国内生保幹部が言うように、「行儀の悪さが当局の不興を買った。今後、新商品などの認可に悪影響が出るはず」(業界関係者)との観測も流れる。
一方、オリックス生命には「事前に露呈すれば抵抗に遭う」(同社関係者)との思惑もあったようだ。
金融庁が、比較広告を事実上解禁したのは2005年。しかし、PR会社などが外資系生保などに比較広告を提案しても、その実現は皆無だった。背景には「保険料の差はサービスや商品性の違い」と主張し続ける大手国内生保の反発がある。
今回はネット生保にとどまった比較広告。「国内生保と比べられずホッとした」(国内生保幹部)という空気も漂う中、オリックス生命が仕掛けた“仁義なき戦い”の次の展開に注目だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)