14年連速の売上減少
2010年の百貨店市場は14年連続の減少となり、08年秋に起きたリーマン・ショック後の激しい販売不振から立ち直れていません。特に主力の衣料品や宝飾品が不調。消費者の節約志向は根強く、百貨店は抜本的なビジネスモデルの変革に迫られています。
百貨店は、かつては革新的な商法を編み出し、長らく小売業の王様として君臨してきましたが、変革を恐れ、規模の拡大だけを続けるうちに、新規プレイヤーに顧客を奪われ収益性でも大きな差をつけられています。
現在シェア第1位の三越伊勢丹ホールディングスは江戸時代に創業された越後屋を元祖とする老舗百貨店の三越と、ファッションに強い伊勢丹の2社が2008年に統合して誕生した日本最大の百貨店グループです。
売上高は1兆2200億円で2位のJ。フロント リテイリングの9500億円を大きく引き離し、歴史、規模ともに百貨店のトップ企業です。
ところがその、三越の原点を言える「三越日本橋本店」が振るわず、近年、赤字が続いています。このため、2013年度から予定していた日本橋店の改装を取りやめる方向も検討しているということです。
日本橋本店が原点なら、JR大阪三越伊勢丹は合併後初ののれんを共にした新店舗で、両社の融合の証とも言えますが、売上は振るいません。
業界動向を占うポイント――JR大阪三越伊勢丹
2011年は東日本大震災の影響が直撃。最も大きな市場である首都圏は消費マインドが悪化し、ブランド品などの不要不急の商品を中心とする百貨店はさらに販売不振が続きました。
一方、関西では大丸やJR系のルクアなどの商業施設が前年比、予算比ともプラスとなるなか、2011年5月にオープンした三越伊勢丹だけが苦境にあります。週刊ダイヤモンドの2012年3月17日のレポートによると、同時期に開業し、隣接するルクアが年間売上目標を250億円から320億円に上方修正したのに対して、三越伊勢丹は年間売上目標を550億円から350億円に引き下げたということです。
その理由は細かいことではなく、百貨店業界がかろうじて望みをつないできた大都市圏でもニーズが縮小していることを示しているのではないかと、業界関係者はJR大阪三越伊勢丹の行方を注視しています。
「箱貸し」ビジネスの終焉
百貨店業界の不振の原因のひとつに、消費者の嗜好の大きな変化と、それに百貨店が対応できていないことが指摘されています。例えば洋服です。多くの消費者は、価格とデザイン性の高い洋服を着ることが少なくなっています。総務省の「家計調査」によれば、服や靴への支出はこの5年間に15%も減少しています。また、百貨店独特の仕入れも原因だと見られています。百貨店は「箱貸し」業と呼ばれ、メーカーに対して強い力関係を背景に、在庫負担を少なくする仕入れ方法をとって来ました。
ところが「ユニクロ」や「無印良品」など強いブランド力をもつ専門メーカーの登場により、百貨店の販売力は落ちてきました。ファーストリテイリングと良品計画の営業利益率は、百貨店が1~2%に対して最大で14倍も上回っています。
2010年に閉鎖した百貨店の店舗は11店で過去10年間で最多。消費税導入などで個人消費の回復がとまるとさらに淘汰の波が続きそうです。
百貨店のシェアランキング(日経シェア調査2010より)
三越伊勢丹ホールディンス 18.4%
そごう・西武 14.8%
髙島屋 12.7%
J.フロントリテイリング 11.9%
エイチ・ツー・オーリテイリング 5.7%
その他 30.5%