新型コロナウイルスの感染が国内外で広がっていることで、企業にとって、感染を防ぐ対策に加え、さまざまに及ぶ業務への影響が表面化。その対応に追われている。
新型コロナウイルスで「発表」、わずか数日で2倍増
東京商工リサーチ(TSR)が2020年2月17日に発表した調査結果によると、「決算短信の発表延期」や「業績予想の修正」ほか、新型コロナウイルス関連の影響や対応についての「お知らせ」を発表した上場企業は、2月14日13時時点までに223社。10日には107社だったが、数日間で2倍以上に増えた。
TSRの独自調査で、工場や事務所、店舗の稼働休止など、何らかの影響が判明した上場企業は28社あり、計251社の上場企業が対応を行っている。
251社のうち、業績予想の修正などに言及したのは193社。このうち45社(構成比23.3%)が、売上高や利益の減少など業績下振れ要因として新型コロナウイルスの影響をあげた。
148社(76.6%)は「影響の懸念がある」、もしくは「影響を確定することは困難で業績予想に織り込んでいない」とした。
251社の業種別は、製造業が156社(構成比62.1%)と6割を超す。中国国内の工場や事業所は一部で再開しているが、サプライチェーンの乱れや従業員の不足が深刻化している。
次いで、サービス業24社(9.5%)、小売業19社(7.5%)、卸売業17社(6.7%)、運輸業13社(5.1%)の順。百貨店各社がインバウンド需要の減少などによる売上高減少を公表するなど、観光・宿泊関連を含むサービス業や小売業などの内需型業種は、すでに大きな影響が表面化している。
中国以外の代替生産、3割が「不可能」
一方、中国国内の日本企業関連のサプライチェーンへの影響などを調べようと、上海日本商工クラブでは、日本貿易振興機構(ジェトロ)上海事務所の協力を得て、会員企業に緊急アンケート調査を実施。ジェトロでは2月17日にその結果を公表した。
それによると、調査に応じた635社のうち、サプライチェーンに関する質問には521社が回答。このうち54%が、中国内の工場の操業停止がサプライチェーンに与える影響について、「すでに及んでいる」と回答した。調査は10日夕から12日にかけて実施したが、調査時点では「中国ビジネス戦略の変更」について「変更する」と回答したのは3%だった。
この調査ではまた、中国内の工場などの操業停止が継続した場合の代替生産や調達が可能かを質問。514社が回答し、このうち31%が「不可能」と答えた。
「一部業務の日本国内回帰や第三国への移管の可能性」については、618社が回答に応じ、「移管を決定」または「検討中」を合わせても1割に満たないが、「まだわからない」と含みを持たせる企業が45%と、「予定なし」(47%)とほぼ同じ割合で半数近くあった。
電機メーカー、部品調達に「悲鳴」
中国でのサプライチェーンの混乱は、国内の物流にも大きく影響している。調達・購買のコンサルタント会社の調査によると、日本企業の88%が、新型コロナウイルスにより生産・物流に支障が出ていると回答。部品や製品が入って来ず、生産や販売が滞っているという。
調査は2月13日に、未来調達研究所株式会社が1万2966社の物流・調達関連従業者を対象に行った「新型コロナウイルスによる生産・物流・調達」についてのアンケート。同社が結果を2月18日に公表した。
それによると、全体の69%が「問題あり」と回答、19%が「調査中」とし、12%が「問題なし」と答えた。同社によると、「調査中」とした企業のほとんどで、中国からの納期延期があるとしたため「支障あり」として合計した。
この調査に寄せられた企業からの声では、電機メーカーを中心に部品調達の苦戦に上がる悲鳴がほとんど。アパレルでは春物製品の調達を終えており、切迫感はないが、夏物については不透明で長期化による影響に対する懸念が聞かれた。