最下位に低迷している楽天が、編成部門を統括するゼネラルマネジャー(GM)として、日米通算182勝をマークした野球評論家の石井一久氏(44)の招へいに動いていることが5日、分かった。6月16日に梨田昌孝前監督(64)が辞任。現在は平石洋介監督代行(38)が指揮を執っているが、同時に来季に向けての体制づくりも進めている。独特の野球観に定評があり、米球界にもパイプを持つ石井氏に白羽の矢が立った。
平石監督代行の下では7勝5敗と健闘している楽天だが、水面下では早くも来季に向けて動きだしている。その目玉となるのが、石井氏のGM招へいだ。すでに球団幹部が接触し、具体的な調整に入っているという。
150キロを超す速球と鋭いスライダーを武器にヤクルト、西武で活躍し、メジャーでも4年間プレーした石井氏は13年に現役を引退。その後はスポニチ本紙などで評論家を務め、頻繁に球場に足を運んでいる。現役時代は、お立ち台で愛犬の成長を報告するなど、「脱力系」のキャラクターでも人気を呼んだが、評論家としては日米通算22年間の現役生活で培った経験を生かした独特の視点と野球理論は高い評価を得ている。
また、吉本興業の「契約社員」という異色の肩書も持ち、選手をサポートするスポーツマネジメントにも携わってきた。明るい人柄は現役時代から後輩に慕われ、楽天・岸、ロッテ・涌井、西武・菊池らは石井氏の影響を強く受けている。
楽天は、チームの人事や補強など編成の全権を任されていた星野仙一球団副会長が今年1月に他界し、編成面はチーム統括本部が担っている。球団幹部は、日本球界だけでなく、米球界にも太いパイプを持つ石井氏の人脈や、マネジメント能力にも着目。フロントと現場の連携をより強化するために、新たに「GM」を置き、チーム再建のかじ取り役を石井氏に託す考えだ。
梨田前監督がチーム低迷の責任を取って、辞任した際、立花陽三球団社長は「(低迷は)私やフロントを含め、全員の責任。監督をしっかりサポートできなかった」と話した。今季はまだ68試合残っており、チームは良化の兆しを見せているが、その一方で来季に向けて戦力の見直しは必至となっている。
石井氏はGM就任に前向きとみられ、今後は就任時期など具体的な調整に入る。契約がまとまれば、初仕事は10月のドラフト会議になる見通し。日本球界初となる「元メジャーリーガーGM」は、話題を呼びそうだ。
◆石井 一久(いしい・かずひさ)1973年(昭48)9月9日生まれ、千葉県出身の44歳。東京学館浦安から91年ドラフト1位でヤクルト入団。97年9月2日の横浜(現DeNA)戦でノーヒットノーラン達成。02年からはドジャース、メッツでプレーし、06年にヤクルト復帰。08年からは西武に所属、13年限りで現役を引退した。日米通算成績は524試合で182勝137敗1セーブ、防御率3.80。主なタイトルは95年最高勝率、98、00年最多奪三振、00年最優秀防御率など。夫人はフリーアナウンサーの木佐彩子。