楽天が2019年に提供を目指す携帯電話事業の概要が29日、判明した。既存の携帯電話大手3社の平均的な月額負担より約3割超安い月額約4000円で提供することを検討。格安スマートフォンに近い料金設定と、動画配信など楽天の各種サービスと連携した割引で利用者を集め、サービス開始から3、4年後の黒字化を目指す。
◆格安スマホにも対抗
楽天が2月に総務省に申請した第4世代(4G)移動通信方式向け電波の新規割り当て計画書にも、料金プランや黒字化時期などは明記されているもよう。総務省の電波監理審議会は計画書などを審査したうえ、30日にも新規事業者として楽天を認可する見通しだ。
関係者によると、楽天は携帯電話大手3社の一般的なスマホ利用者が毎月、端末料金や通信利用料などで支払う金額を6000~7000円程度と想定。そこから2000円以上安い約4000円を主要な料金プランに設定すれば、格安スマホ利用者が支払っている毎月2000~3000円に対抗できると判断した。4000円を超えるプランや下回るプランも、毎月のデータ通信の利用量などに応じて設定する。
また、楽天のクレジットカードで携帯電話料金を支払う場合の料金割引や、動画配信など楽天の各種サービスの携帯電話利用者向けの割引制度も導入。「3、4年後に数百万件の契約を獲得して黒字化を達成できる」(楽天幹部)と青写真を描く。
一方、25年までに最大6000億円を投資する設備投資計画については、既に東京電力や関西電力、中部電力の鉄塔や電柱を借りて基地局を設置する契約を締結している。都市部では、オフィスビルなどの高層建築物に小型基地局を設置することでコストを削減する。当初は人口が多く、契約者数も増やしやすい都市部に集中して基地局を設置し、電波をつながりやすくする。
三木谷浩史会長兼社長は2月の決算会見で、人工知能(AI)を活用することなどで「今までにないような効率的な基地局のネットワークを引ける」と述べ、設備投資計画に自信を示していた。
◆後発・高効率が強み
三木谷氏は29日、東京都内で開かれた株主総会に出席し、携帯電話事業への参入について「楽天の歴史的な転換点だ」と述べた。基地局などの設備投資についても、携帯大手3社が対応する必要がある第3世代(3G)移動通信方式などの古い通信設備の整備が不要なことなど、“後発のメリット”も強調したという。
さらに、ポイント還元率が高い楽天のクレジットカード事業について「オペレーション効率がいい」(三木谷氏)と発言。このノウハウを生かし、携帯電話事業でも利用者の低料金ニーズに応えたい考えだ。(大坪玲央、西岡瑞穂)