楽天vsTBS いまなぜ攻防再開なのか

楽天がTBS株式を保有比率20%超まで買い増す方針を表明した。三木谷浩史会長ら2人のTBS社外取締役就任を株主提案するという。TBS側は、買収防衛策の発動を検討している。約1年半の“休戦”が終わった途端に戦闘が再開されたとでもいうべきか。

 楽天が、TBS株式を大量取得し、「放送とネットの融合」を旗印に経営統合を申し入れたのは、平成17年10月だった。保有比率19%強まで買い進めた後、統合提案を撤回し、議決権を凍結した上で業務提携協議に入った。しかし、進展がないまま今年2月で議決権凍結期限は終了、今回、提携協議も打ち切られることになりそうだ。

 どうにも明確でないのは、三木谷氏の狙いである。

 持ち株比率が20%を超えると、TBSは楽天の持ち分法適用会社になり、TBSの最終損益の一部が楽天の営業外損益に加算される。財務上のメリットとなり、TBSという強力なブランドも手に入る。しかし、三木谷氏が熱心に唱えた「放送とネットの融合」の姿はまったく見えてこない。

 ブログ、インターネット上の会員制サークルであるソーシャル・ネットワーキング・サービス、動画投稿・閲覧サイトと、ネット関連ビジネスは続々登場している。

 こうした激しい動きが、斬新と思われた手法も短期間で新鮮さを失う状況を起こしている。放送界、ネット業界いずれにも、楽天がめざすような特定の放送局とネット企業の関係強化は、むしろ柔軟性・機動性を損なうとの認識が広がっているのだ。

 テレビの国民に対する影響力は圧倒的だ。三木谷氏がその放送事業者の重みを踏まえた上で、ネットで培ったノウハウを生かし、放送局の企業価値を高めるというならば、TBSだけでなく、国民も納得できる具体的な構想を示さねばならない。

 TBSも番組収録中の事故隠しや、視聴者に誤解を与える問題番組が相次いでいる。放送事業者として自覚が問われかねない状況だ。

 関西テレビの捏造(ねつぞう)問題で、国民の放送界を見る目はかつてなく厳しい。自らを厳しく律する姿勢を取り戻さなければ、楽天との攻防で、世論の支持を得るのは難しくなるだろう。

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