宮城県七ケ浜町で東日本大震災の津波をかぶりながら、多くの人の力によって奇跡的に再生された「復興ピアノ」の演奏会が20日、横浜市内であった。
震災発生から10年の2021年に横浜商工会議所が企画した演奏会で、新型コロナウイルス禍による延期を経て実現した。気仙沼市出身のピアニスト岡本優子さんが出演し、ウッドベース、ドラムとともに計7曲を演奏した。
大学進学を機に渡米し、震災当時はニューヨークで活動していたという岡本さん。古里の情報は届かず、両親との電話もつながらない。大きな孤独感が押し寄せる中、ひたすら無事を祈りながら作曲した「プレーヤー」を復興ピアノで奏でた。旋律は子守歌のように穏やか。岡本さんは「自分を落ち着かせるために作ったのかもしれない」と振り返った。
情感たっぷりの音色に、会場に集まった約900人の観客から大きな拍手が湧いた。横浜市の横田英靖さん(70)は「いい音色だった。震災と被災地に思いを寄せる時間になった」と語った。
(報道部・小関みゆ紀)