機能しない備蓄米制度 市場価格高騰、農家入札控え

コメ不作に備えて政府が管理する「備蓄米」制度が機能不全に陥り、見直しが避けられなくなっている。昨年度から、収穫前に農家からコメを買い取る新方式が始まったが、市場価格が高止まりし、2年連続で買い取り量が目標値を大幅に下回っているためだ。備蓄量は適正水準を割り、大規模災害など非常時に備えるという本来の目的が果たせない恐れも出てきた。
 現在の備蓄米制度は、政府が6月までに収穫されるコメを競争入札で計20万トン買い取る契約を農家と結ぶ。備蓄の適正水準を計100万トンに設定し、代わりに5年が経過した古米20万トンを非主食用として売却する。その結果、農家は安定収入を得られる一方、作況にかかわらず適正量を確保できる狙いがあった。
 それまでの制度は、収穫後に政府が買い入れ、備蓄後は主食用として売却していた。豊作の年には米価安定策として在庫が適正量を超え、追加買い入れのための財政負担も増えるなどの問題があり、見直された。
 だが、現在の制度の下で政府の買い取り量は平成23年産米が約7万トン、24年産米が8万トン強で、2年連続で目標の4割前後にとどまる事態になった。
 東京電力福島第1原子力発電所事故の影響などで、米価が高止まりすると判断した農家が入札を手控えたほか、農家と流通企業との直接取引が増えているのが要因だ。
 備蓄量は、売却されるはずの18年産米を残しても、適正量に届かない95万トンにとどまる。農林水産省は「コメ余り以外のリスクに対応していなかった」(農産企画課)と誤算を認める。
 こうした中で、7月末の「食料・農業・農村政策審議会食糧部会」では、委員から早急な見直しを求める声が上がり、農水省は11月の部会で見直し案の検討を約束した。
 ただ、23年度に新制度に移行したばかりで、農水省は「買い取り量や入札時期、非主食米での売却方針は堅持せざるを得ない」というのが本音だ。
 元東京大農学部長の生源寺真一名古屋大教授は「制度が問題なのか、市場に問題があるのか、議論を整理し、改善策を導き出す必要がある」と指摘するが、農水省は「生産者らにヒアリングして対策を探る」としている。具体的な解決策が見えず、手詰まり感が否めない状況だ。

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