次世代原発の新増設・建て替え推進 経産省が審議会に方針示す

経済産業省は28日、今後の原子力政策について、安全性を高めた次世代原発の新増設・リプレース(建て替え)を推進する方針を同省の審議会に示した。最長60年と定められている原発の運転期間については、60年超の運転を可能とする新ルール案も提示した。電力の安定供給と脱炭素化に向け、原発を長期的に活用する方向性を具体化した。

 岸田文雄首相が8月の「グリーントランスフォーメーション(GX)実行会議」で、次世代原発の開発・建設と、60年超への運転期間延長について検討を指示していた。政府・与党の調整や経産省審議会の議論を経て、年末のGX実行会議で正式決定する見通し。

 経産省の有識者会合「原子力小委員会」で提示した。次世代原発の建設について、原発の廃炉に合わせて同じ原発敷地内に次世代原発を建設するリプレースの「具体化を進めていく」との方針を盛り込み、リプレースを軸に建設を目指す方向性を明確にした。

 原発の運転期間について現行制度は、原則40年、一度だけ最長20年延長できる「40年ルール」を定めている。新ルール案では、現行の40年ルールを残した上で、福島原発事故後の原子力規制委員会の安全審査により原発が長期間停止した場合、再稼働までの停止期間を運転期間に算入しないようにする。例えば、長期停止期間が10年続いた場合、運転開始から最大70年の運転が可能になる。

 今回の運転延長案は、国のエネルギー政策に基づき、それぞれの原発を長期利用する必要があるかどうか政策判断するもの。実際の運転延長は、原子力規制委員会の安全審査に合格し、運転延長の認可を得ることが前提となる。

 経産省の新ルール検討と並行して、規制委は11月、運転開始から30年を超える原発について、最大10年ごとに安全審査を実施し、運転延長を認可するかどうかを判断する新制度案を公表している。

 全国にある15原発33基のうち、17基が運転開始から30年超が経過。最長60年運転のままでは、政府が「二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロ」を目指す2050年には多くの原発が廃炉となり、発電電力量に占める原発の割合は10%程度になる計算だ。

 政府は、電力の安定供給と脱炭素社会の実現を両立させるため、発電時にCO2を排出しない原発の長期的な利用を目指し、次世代原発の開発・建設の検討に着手した。ただ、実用化は30年代半ば以降になる見通しで、それまでの「つなぎ」として既存原発を延命するかどうかが課題となっていた。【浅川大樹、吉田卓矢】

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